WALK

【HELLO!Hacco】vol.3 大原で触れる本物の藍染《中編》

【HELLO!Hacco】vol.3 大原で触れる本物の藍染
《前編》 / 《中編》 / 《後編》

前編は、大原の「工房 藍の館」さんでTRYさせていただいた本藍染体験のレポートでした。

今回は、本藍染とそれ以外の藍染の違いや、天然素材にこだわる伝統的な藍染の手法「天然灰汁醗酵建」の工程などについて、「工房 藍の館」の下村さんに伺ったお話をお伝えしていきます♫

「本藍染」とは?「化学藍」とは?

─ 藍染とはどんなものですか?

下村 藍染は、藍液で糸や布を染める染色の方法です。日本の藍染では、タデ藍という植物を使い染液を作ります。

タデ藍(「工房 藍の館」パンフレットより)

飛鳥時代に中国から伝わり独自の発展を遂げたので、日本特有の文化と思われがちですが、実は藍染は世界中にあります。
インドのインド藍にはマメ科の植物、ヨーロッパではウォードというアブラナ科の植物、琉球藍にはキツネノマゴ科の多年草植物が原料として使われます。

─ 雑誌などで、「本藍染」「合成インディゴ」「ピュアインディゴ」といった言葉を目にしますが、どういう違いがあるんですか?

下村 現状、藍(インディゴ)で染めたものすべてが藍染と呼ばれています。「本藍染」は、タデ藍を発酵させて造った藍染料「蒅(すくも)」を木の灰汁で溶き、大きな甕で何日もかけて発酵させ、数十回染め重ねて染色する方法です。

タデ藍を発酵させて造った「蒅(すくも)」

一方、「化学藍」「合成インディゴ」と呼ばれるものは原料が石炭や石油です。
そういったものでも、染液が化学的な薬品で作られていても、藍染とうたわれています。また、蒅とインディゴを混ぜて使う割建てという方法もあります。

※「化学藍」:1878年、ドイツの化学者によって発明され、藍染めの藍と全く同じ分子構造コピーを石炭から大量に合成する事に成功したインジゴイド染料。(現在は石油系)合成インディゴ、ピュアインディゴ等とも呼ばれる。

─ 藍染と名がつけばすべて天然由来の染料を使われていると思っていたので驚きました。なぜそんなことに?

下村 藍色は、平安時代までは貴族階級が愛用していて、もめん糸が大量に生産されるようになった江戸時代に庶民にまで深く浸透しました。

庶民が身に着けることを許された色彩が藍色だったようですね。江戸時代は日本の藍染の黄金期とも言えます。私はこの頃から続く「天然灰汁醗酵建」という技法で藍染をしています。

江戸時代の藍栽培の様子

下村 明治あたりから安価で簡便に染められるインド藍が輸入され、化学藍が製造されるようになったんです。

また、第二次世界大戦中、食料増産の為、藍は栽培禁止の作物となり生産量も激減しました。

今や「天然灰汁醗酵建」による藍染を使った商品は、藍染を謳っている商品の中のほんの一握りです。だからこそ、上質な天然藍の持つ独特の風合いと鮮やかな色彩の美しさをお伝えしていきたいですね。

「工房 藍の館」Instagramより

「藍は生き物」。藍にも体調がある?!

下村さんがなさっている、「天然灰汁醗酵建」の工程を調べてみました。

「藍師」という職人の方々が、収穫された藍葉を細かく刻み乾燥させ、水を加え100日かけて発酵させて「蒅(すくも)」ができ、聞くところによると、発酵時は山積みした葉藍の温度(中心の温度)は、約70度くらいになるとか。

気温や湿度の変化に合わせて五感を頼りに行う作業は、種まきから数えると約300日以上もかかって完成するそうです。

江戸時代の「蒅」づくりの様子

─ 藍染って、なんとなく手間暇かかっているイメージはありましたが、原料にもこれほどまでに労力がかけられているんですね。

下村 蒅(すくも)は、約1年という長い時間と手間をかけて作られた貴重なものです。
藍の葉を醗酵させることにより、タデ藍の葉の中に含まれるインジカンという成分を藍染に必要な色素インジゴに変化させています。

私は、徳島の藍師 新居さんのものを使用しています。この袋に入ってるんですが、袋のマークも各製藍所さんで違うんですよ。

その「蒅(すくも)」を液状に発酵させます。「藍が染まるように染料化する」作業のことを「藍を建てる」と言います。
 ・灰汁(木灰を熱湯に浸した上澄み液、アルカリ性)
 ・ふすま(小麦の外皮)
 ・日本酒
 ・貝灰

「蒅(すくも)」の状態ではまだ色素が水に溶けていません。藍の色素はアルカリにしか溶けないので、アルカリ性の灰汁(木灰を水に浸した上澄み液)の中で微生物の働きで色素を還元させ、染液を作ります。

発酵菌の栄養となるふすま(小麦の外皮)、日本酒、貝灰を入れ、加温(20~25度 ※)し、発酵を待ち、建てはじめてから1週間ほどで、「藍の華」が現れ、ようやく布を染められる状態になります。この液の中で何度も染め重ねていきます。

※設定温度は、地域・気候・設備等によって異なります。

染め終わった後は、藍の体調により、灰汁を入れたり、ふすまを煮て入れたり、貝灰を入れたりといった対応をして、藍の状態を整えます。

灰汁を入れる作業

攪拌する作業

─ 本藍染で大切なことは?

下村 蒅や灰汁品質、水質や温度により、藍の体調は大きく変化します。生き物なので、赤ちゃんや子供を育てると同じように、対応の答えがひとつではないんですね。香りや表面の色、藍の華、手への色のつき具合など、すべてを見て感じとってあげないといけないんです。毎回変わる条件に応じてうまく汲み取ってあげることが大事なんです。

工房内に置かれている日本酒を見て「あれ?染めながら飲んだりなさるのかしら?」
と思ったのは大きな間違い!下村さんではなく、藍のためのお酒なのでした。

藍が元気に過ごせるよう、まるで対話をするがごとく藍と向き合っていらっしゃる下村さんのお姿が印象的でした。

続く後編では、下村さんに本藍の魅力についてお尋ねします!


工房 藍の館

住所:
 京都市左京区大原大長瀬町276
WEB:
 https://aizomeya.com/
Facebook:
 https://www.facebook.com/aizomeya/
Instagram:
 @koubou_ainoyakata
※出張が多いため、お越しの際はお問い合わせの上、必ず事前予約をお願いいたします。

はっこまち編集部

藤井綾子

京都市在住。好きな発酵食品は、どぶろくと紹興酒。好きなものは和菓子、親子イベント、世界遺産。オススメの旅先はガラパゴスです。



NEW