INTERVIEW

北川本家 杜氏・田島善史さんインタビュー【vol.4】何よりも「和」を大切に。「和醸良酒」という言葉を胸に、酒造りへ向き合う。

vol.1~3に引き続き、北川本家さんにて杜氏を務められる田島さんのインタビューです。

vol.4では田島さんが酒造りを行う中で大切に考えられていることについてお話をお伺いしました。

酒造りは何より“チーム力”が重要

vol.1~3の中でも、度々登場していた「チーム」というワード。

現場の作業について説明される間も、田島さんは「チーム」という言葉を何度も口にされていました。

例えばそれは午後から行われた米洗いの作業のときも同じ。

米洗いとは白米についている糠や余分な部分を水で洗い流し、お米を水に浸し適量の水分を含ませていく作業です。

大きな桶とざるに10kgの米を入れ、水を入れていく。

酒造りのためのお米は通常のお米よりも高度に精米されていて吸水スピードがとても速いので、秒単位で時間を計測し作業を進めていくことがとても重要になります。


秒単位で時間を計測。緻密な作業だ。

田島さんがストップウォッチで時間を計りつつ、他の蔵人さんが一声かけるだけで次々と作業が進んでいく様子は、まさに長年培ってきたチーム力の賜物。

「酒造りは、決して杜氏ひとりの仕事ではありません。今日一日作業を見ていただいたのでおわかりいただけたかと思うのですが、どの作業もひとりで行うのは難しいものばかり。酒造りにおいては全員が主人公。なので誰か一人が欠けてもだめなんです」

と、笑顔でおっしゃる様子から、田島さんの酒造りへの情熱と、チームへの愛が伝わってきました。

それぞれが自分の仕事をきっちりこなす。チームを支える蔵人たちの思い

田島さんが「酒造りは何よりチーム力」とおっしゃるのと同じように、ほかの皆さんも同じ思いを抱いておられました。

例えば、麹造りを一手に引き受けるベテランの西田さんが、酒造りに携わるうえで心がけているのは「良い麹を生み出すこと」なんだそう。

「麹はお酒の味を決める重要な存在です。麹の良し悪しが他の全てに影響する重要な部分なので、ここで失敗すると全てだめになってしまう。なので、自分のできることはしっかりしないと、と思っています」

同じく麹づくりに携わっている石亀さんも、「良い発酵をするように、良い麹を生み出したい」とお話ししてくださいました。

(左)石亀さん (右)西田さん

また、酒母づくりを担当される平井さんは「段取りをしっかり組むこと」だそう。

どういうことかお伺いしてみると、

「準備が不完全な状態だと慌ててしまい、ミスを誘発してしまうからです。生き物を相手に仕事をするので、段取り良く物事を進めていかないと酒母がだめになってしまいますし、酒母がだめだと全員に迷惑をかけてしまうので、きっちり段取りを組むことは、日々心がけています」

酒造りに携わって13年の平井さん

皆さん、自分の仕事が他の全てに影響するので自身の担う部分はきっちり行うという気持ちで取り組まれています。

ひとりひとりが強い責任感を持って酒造りに取り組んでいるのは、杜氏も蔵人も同じです。

こうして各々同じ思いをもって酒造りに向き合っているからこそ、高いチーム力が生まれ、良いお酒が生み出されているんですね。

和を大切にする“和醸良酒”の精神

田島さんが杜氏としてチームを率いていく中で大切にされているのが「和醸良酒」の精神です。

 ・和があれば良い酒が醸される。

 ・良い酒がある場には和が醸される。

というふたつの意味があるこの言葉。

重労働が多く、時に不眠不休で作業を行う酒造りは1人の力ではどうにもならないことばかりです。酒造りに携わる人間の仲が悪ければ、一致団結して作業はできません。

呼吸を合わせて作業に取り組めば、良い酒ができる。良い酒を醸すためには酒蔵内の「和」が必要だということ。

そして、もうひとつが、良い酒が和を広げてくれるということ。お米を育てる農家や、お酒を取り扱う酒店や飲食店などと協力することで「和」が作られていく。酒蔵と、酒蔵の周りを取り囲む環境とをつないでくれるのが良い酒だということです。

田島さんをはじめ蔵人の皆さんのこうした思いがこもっているからこそ、「富翁」が長きにわたり愛され続けてきたのだと深く感じました。

“ちゃんとつくって、ちゃんと知ってもらう”

だからこそ、「楽しく飲んでほしい」と田島さんは考えられています。

「長い歴史と伝統があることを思うと、背筋を伸ばして心して飲まなければ……」という気持ちになった(vol.3参照)ことをお話しすると、

「おっしゃるように、ちゃんと勉強して飲むもの・知識がないと飲めないものだと思われる方が多いかもしれませんね。特に若い女性だと、おじさんの飲むものだと思っている方もいらっしゃいますし。

総じて日本酒にとっつきにくいイメージを持っている方が多いのでしょうが、知識は関係ないと思っています。まずは楽しく飲んでもらって、日本酒っておいしいものだと感じてもらうことが何より大切ですね」

昨今、日本酒消費量が減少しているのを受け止めたうえで、少しでも興味を抱いてもらうきっかけになればと、全国各地のイベントやワークショップで日本酒の魅力を伝える活動をされています。

お忙しい中、今回の取材を受けてくださったのも、そういった思いがあるからこそ。

「こうして記事にしていただくことで、『日本酒っておもしろそうだな』と感じてもらえればうれしいです。まずは興味をもっていただくところからだと思うので」

とはいえ、20年前の杜氏に就任したばかりのころは、毎日必死でそんな余裕もなかったのだそう。

「酒造りはその都度見えるものが違い、『慣れる』ということがありません。慣れたら慣れた分だけ視野が広がり、今までとは違うことに気づかされるので、常に新しい挑戦になります。

こうして対外的な活動にも力を入れていこうというのは20年前には思いもよらなかったことです」

杜氏として最高の日本酒を造りあげることはもちろんですが、今はそれだけではなく「蔵のことを伝えたい」「日本酒について知ってもらいたい」という気持ちをもって酒造りに取り組んでおられる田島さん。

「富翁を飲んでもらいたい、というよりは日本酒をもっと身近に感じてもらいたいという思いが強いです。もちろんうちのお酒を選んでもらえると嬉しいですけどね」

と、笑顔で話してくださる様子がとても印象的でした。



「ちゃんと作業してちゃんとつくったものを、ちゃんと知ってもらうのが大切だと思っています」

確かに「ちゃんと」つくられた富翁は、北川本家さんの蔵人さんたちの思いがこもっているからこそ、より一層おいしく感じられるのでしょう。




つづく




■株式会社北川本家

住所:京都市伏見区村上町370番地の6
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■酒と米 おきな屋

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    ※2018年11月~12月はお休みなし
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