INTERVIEW

日本酒コンシェルジュ Ponさん・インタビュー【vol.4】おいしい「日本酒」を飲んでみよう。

vol.1vol.2、vol.3(※リンク)と続いてきた「日本酒」の奥深い世界を知るこの企画もいよいよ最終回。Vol.1~3で知ったことを生かして、日本酒コンシェルジュ・Ponさんと一緒に日本酒を堪能してきました。vol.4ではその様子をレポートしたいと思います。

日本酒の美味しさは「並行複発酵」の賜物

お酒というと醸造酒や、蒸留酒などの区分がありますが、日本酒は醸造酒にあたります。蒸留酒を除くと、清酒は世界中のお酒のなかでも特にアルコール度数の高いお酒と言われています。「並行複発酵」という発酵形式で醸造されているからこそ高アルコール生成が可能なのだそう。

─ 「並行複発酵」とはどのような現象なんですか?

Pon 例えばワインなどの果実酒は、ぶどうの果汁そのものに糖分が含まれているのでそこに酵母を加えることで発酵します。これを単発酵と言います。

一方、日本酒の原料であるお米はデンプンなので、麹の酵素の働きでデンプンを糖分(グルコース)に分解させてから、酵母で発酵させる必要があります。

麹によるデンプンの「糖化」と、酵母による「発酵」を同時に進行させることを「並行複発酵」と言い、日本酒特有のまろやかで奥深い旨味の由来となっていると言えます。

─ 麹もいろいろな種類があると聞いたことがあります。

Pon 醸造によってできる食品には麹菌を利用します。日本酒はもちろん、焼酎やみりん、味噌、醤油、酢などの伝統的な発酵食品には不可欠な存在です。

麹を造ることを「製麹(せいきく)」といい、原料となる穀物に水分を与え蒸したものに種麹をまき適した温度で保管し培養したものが麹です。日本酒の醸造には、デンプンの分解力が強い黄麹菌(きこうじきん)を利用しています。

─ 様々な要素が重なってできているのが日本酒なんですね。

Pon そうですね。だからこそ独特の旨味と複雑で奥行きのある味わいを楽しむことができるんです。日本酒の味わいはとても奥深く、基本味の五味で言うと、塩味以外の甘味・うま味・酸味・苦味を感じられます。

─ よく「甘口」「辛口」という表現をしますよね。

Pon 日本酒の味わいの表現方法でよく用いられていますよね。ただ、「甘口」「辛口」は反対語のように言われていますが、味覚として辛味の受容体はないと言われているので、実はけっこう抽象的な表現だったりします。

─ たしかに言われてみれば、変な感じがしますね。

Pon 僕自身として、実際には甘味が弱いので相対的に辛い、もしくはアルコールなどの刺激によるテクスチャーのことだと思っています。ややこしい表現なので、甘味が弱いと感じたときは「残糖感がない」という表現や、乾いたという意味でドライという表現をしています。

─ そうなると私は辛口のほうが好きかもしれません。

Pon いろいろ飲み比べてみることで、自分の好みというのがしっかり確立されてくると思いますよ。合わせる料理にもよりますし、特に温度帯の違いでガラリと印象が変わるので、色々試してみるのと面白いです。

ここまでいろいろと教えていただき日本酒への興味がかなり高まってきたので、そろそろ飲んでみましょうということで、Ponさんにセレクトしていただき飲み比べてみました。

3種類の日本酒を飲んだのでレポートしたいと思います!

■玉川 自然仕込 純米酒(山廃)雄町 無濾過生原酒/ 木下酒造(京都)

初めは、京都・京丹後市に蔵を持ち、江戸時代に創業された木下酒造の『玉川 自然仕込 純米酒(山廃)無濾過生原酒』です。普段あまり飲まないお燗ということで……ドキドキしつついただきます。

まず、香りがイメージする日本酒とは違うことに驚きました。甘く香ばしい、お菓子のような香りを感じながら口に含むと、炊き立てのごはんの香りや、ナッツのような香ばしさ、バターやチーズのようなミルキーなお味がしました。

お燗にすることで、舌に残る暖かさと口いっぱいに広がる旨味を思う存分感じることができます。それと一緒にキリッとした酸味も感じられ、コクがあるとはこういうことか、というのが印象です。キリッとした中にもお米の優しい甘みも感じられ、奥深い味わいを堪能しました。

せっかくなので「鯛の昆布締め」と合わせることに。結構お酒の主張がしっかりはっきりしている印象だったので、お料理の良さをかき消してしまわないか、心配だったのですが杞憂に終わりました。

「玉川」をひとくち飲んで口内が温まったところに、鯛をほおばる。温められたことで口いっぱいに鯛の甘みと昆布の風味がひろがります。

初めてお燗のお酒を「美味しい」と思わせてくれた「玉川」。暑い夏にお刺身といただくのももちろん最高ですが、次の冬にはお鍋をつつきながら味わってみたい、そんなお酒です。

■刈穂 夏純米吟醸 六舟 Summer Mist / 秋田清酒(秋田)

続いて、秋田清酒の「刈穂 夏純米吟醸 六舟 Summer Mist」です。鮮やかな透明感のあるブルーのボトルがかわいくも清々しく、夏らしさを感じさせてくれるデザインとなっています。

こちらは「おりがらみ」といって、絞った後の日本酒の「おり」を取り除かないまま出荷するため、うっすらにごっているのが特長です。

グラスに注がれた様子は、まさに夏の霞を思わせるようなかすみがたった白い色をしています。なんだか、ふとスタンドバイミーを思い出してしまいました。脳内に流れるベン・E・キング。ともあれまずは一口いただきます。

どぶろくやにごり酒のイメージから、にごったお酒というとお米の味や麹の風味をかなり強く感じるのかと思っていたのですが、繊細で上品な旨味と風味の、想像とは真逆のお味でした。

すっきりした飲み口のなかにほんのり感じられる酸味が夏らしく、どこか懐かしい味わいを楽しめます。きめ細かいうすにごりによる爽やかな味わいがたまりません!

こんなに爽やかで夏らしい味わいの楽しめる「刈穂 夏純米吟醸 六舟 Summer Mist」ですが、夏限定ということで今年度の出荷は終了されているのだとか。

なかなか巡り合えないのもまた夏らしい情感があるなあなんて思いつつ。次回の出荷は2019年5月頃からになるとのことです。来年の夏にまた出会えるのが本当に楽しみなお酒です。

■長寿金龜〈赤〉生原酒 / 岡村本家(滋賀)

とりを飾るのは滋賀県・岡村本家の「長寿金亀〈赤〉生原酒」です。金亀という名にふさわしく黄金色の美しいお酒です。

Ponさん曰く、玄米だけで日本酒を造るのは技術が必要で難しいのだとか。その難しさを乗り越えて生まれたこのお酒。玄米でできたお酒を飲むのはこれが初めてです。早速、心していただくことにしましょう。

飲んだ直後の第一声は「本当に日本酒?」でした。とろーりとした濃厚な甘さがするっと抜けて胃まで落ちていきあたたまる、そんな感覚でした。もっと玄米が主張してくるのかと思っていたのですが、むしろ控えめ、でも凛とした上品な甘さと香ばしさが絡み合い独特の旨味が生み出されていました。

日本酒というよりは、洋酒のような感覚があり、甘いお菓子やメープルシロップやパンケーキに似た風味が感じられます。

和食と合わせるのはもちろんですが、濃厚かつすきっとした甘さはバニラアイスやブルーチーズに合わせてみても良いかもしれません。多幸感に包まれる味わいをじっくり楽しむことができます。

あまりの美味しさに帰りの電車の中で反芻していて、ふとちょっぴり塩気のある豆大福と一緒に飲むのもすごく良いかもしれないと思いつきました。

あまじょっぱい食べ物と共に、するりとした甘みと香ばしさ、後にほんのり残る酸味を堪能する。贅沢なお酒でした。

・・・

日本酒というと専門用語や知識が多くて難しい、少しとっつきにくい印象がぬぐえなかったのですが、今回Ponさんにいろいろとお話をお伺いしたことで、少し距離が詰まった気がします。

知識を得たうえで飲むとさらに美味しく感じられるし、もっと知りたい・飲んでみたいという気持ちが高まりました。知れば知るほど、奥深い日本酒の世界に足を踏み入れてみようと思います!

Ponさん、お話ありがとうございました!

■PROFILE

Pon

友人に勧められた日本酒を飲み、電撃が走る。その一杯に出会い、日本酒の魅力にとりつかれる。飲み方スタイルは、お酒に寄り添い語り合う。自家熟成家。日々思うことは、「日本酒を支えてきた全ての文化と人々に今日も感謝」

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