INTERVIEW

北川本家 杜氏・田島善史さんインタビュー【vol.1】酒処 京都・伏見の地で歴史をつなぐ「北川本家」の酒造りに迫る。

11月、もみじが色づきだし、京の町が多くの観光客でにぎわい始める季節がやってきました。

京都市の南に位置する伏見も、同様に多くの観光客の姿が見られますが、ほかの地と違いどこかはりつめたような、シンとした空気が感じられる気がします。

それもそのはず。晩秋から早春にかけておよそ半年間にわたって行われる日本酒の仕込みが、始まりの時を迎えているからです。

1年で最も寒い冬場の時期に酒をつくることから“寒造り”とも言われ、秋の訪れとともに始まる酒造りは、年を越し春がやってくるまでほぼ休みなく行われます。

今回訪れた11月中旬はまさに仕込みの真っ最中のとても忙しい時期。

そんな大変な時期に快くインタビューに応じてくださったのが、「富翁(とみおう)」という銘柄で知られる北川本家さんで杜氏(とうじ)を務められている田島善史さんです。

酒造りに携わって30年という大ベテランの田島さん。

全国新酒鑑評会で10回も金賞を受賞されているだけでなく、京都市伝統産業「未来の名匠」にも認定されていらっしゃるすごい方なんです!!

(未来の名匠:伝統産業界を牽引する人材の育成を目的に、京都市内で活躍される優秀な伝統産業技術者の方々を認定する制度)

普通では、気軽にお話することもなかなか叶わないのですが、とても気さくな優しい方で、丁寧に酒造りや北川本家さんについてのお話を聞かせていただきました。

まずは実際に仕込みの様子を見学させていただいたので、その様子をお伝えしたいと思います。

朝早くから始まる仕込み作業のカギはチームワーク

朝8:30、北川本家さんを訪ねるとすでに仕込みの作業が始まっていました。

「今日の午前は仕込み作業、午後は米洗いをするのでとても忙しい日になります。

でも酒造りの大切な作業をたくさん見ていただける良いタイミングで来ていただけました」

と、忙しい日にも関わらずにこやかな田島さん。

杜氏直々にご案内していただけるということで少し緊張していたのですが、田島さんが笑顔で出迎えてくださったのでほっとしました。

早速、白衣とマスクを身に着け、現場へ。

まず始めに、「実際の作業を少し体験していただければ」ということで、仕込みタンクに麹を入れる作業を手伝わせていただけることに!

仕込みタンクに仕込むための麹

実際に作業を手伝わせていただく。

田島さんや他の皆さんが作業されるところを見ていると、軽々進められているように見えるのですが、これがなかなかの重労働。

私が1往復する間に田島さんは2往復目に入っていて、スピード感が全く違いました。

この日、気温が16~17℃ほどの秋らしい気候で、朝なんかは肌寒いくらいだったのですが、これでもまだあたたかいのだそう。

「寒いときの仕込み室は-2℃くらいまで下がることもありますね。

こんなにあたたかいとなかなか温度が下がらないので品温調整をします」

寒くて気温が低いほうが仕込みがしやすいのだそうです。

酒造りに不可欠な「一麹、二酛、三造り」

酒造りには、「麹づくり」、「酛(酒母)づくり」、「造り(醪)」の3つの酒造工程の大切さを順に表す「一麹、二酛、三造り」という言葉があります。

ひとつめの「麹づくり」ですが、北川本家さんは自社で麹をつくられているので、乾蔵の五階には立派な「製麹室」があります。

全て機械化されているのかと思いきや、今でも一部は手づくりなのだそう。

製麹室の前で説明してくださる田島杜氏

「最初は手造りの仕方を学びます。麹ができる工程を理解していないと、機械は扱えません。はじめから機械を使ってしまうと、『なぜそうなるのか』『なぜこの作業が必要なのか』がわからない。まずは工程を理解しないと、機械をうまく使いこなせませんからね」

機械化することで、考え方が失われることを田島さんは危惧されています。

もちろん機械化したほうが良い部分もありますが、全てを機械に頼ってしまうということは、その作業の意味合いや役割が忘れられ受け継いできた伝統や歴史を失うことに繋がるからです。

「それに、一番楽しい部分も機械にとられちゃいますしね」と笑顔を見せる田島さん。

手仕事と機械、それぞれの良いところも大変なところも知り尽くしているからこそ言えることだと思いました。

続いて、酒造りに不可欠な要素の二つ目が「酛(もと)」です。

酛とは、酒母(しゅぼ)ともいい蒸米・麹・水を用い優良な酵母を培養したもののことを指します。

酵母は、糖をアルコールに変えるために必要で、この酵母がなければ日本酒はできません。

「酛」を仕込んでいく。

「寒い時期の水仕事が多いのですが、酒造りの作業をしていると、手が荒れて辛いということがあまりないように感じます」 と田島さん。

確かに、水をさわることの多いお仕事にも関わらず、田島さんをはじめ皆さんお肌がすべすべでつややか。

よく美容の雑誌やテレビで、発酵は肌にも良いということが書いてあるのは、こういうことなのでしょうか。

発酵のパワーを感じさせられました。

そうこうするうちに、酒米が蒸しあがる時間になったので、蒸米機のある五階へ。

室内に立ち込める蒸気からは、炊き立てのお米の甘いかおりがします。

蒸米機と、蒸米をチェックする蔵人さんの様子

蒸しあがったお米は余計な水分は含んでおらず、中心は白いのですがその周りは透き通っていました。

そのままだとぱらっとしていますが、こねると弾力が出てお餅のようになるので、これを酒造りの世界では、「ひねり餅」と呼びます。

蒸米をこねてできる「ひねり餅」

ひねり餅とは、蒸米の蒸しの状態を確認するために、一握りほどの蒸米を手のひらで押しつぶし餅のようにしたもののことを指し、かたさや弾力、香り、肌のすべり、手触りや透明度、蒸米の伸びなどを調べ、十分かどうかが判断されます。

水を吸いすぎても、吸わなさ過ぎてもだめで、そのバランスが上手くとられているのは、さすが職人技ですね。

押しつぶす前はぱらっとしていたので、これが餅みたいになるの?と心配になったのですが、押しつぶしていくとまとまって餅のような状態になりました。

食べてみるともちもちで、お米の香ばしいかおりと甘みが口いっぱいに広がるので、お米そのものの美味しさが感じられます。

このお米のおいしさが、日本酒のおいしさにつながるのだと思うと、お米を蒸すという作業の重要性を実感しました。

ところで、何度か登場する「酒米」って何?と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

酒米とは、「酒造好適米」の略で、文字通り酒造りに適したお米のことを指します。

何をもって酒造りに適したお米と判断するのか?

田島さんに詳しく丁寧に解説していただいたので、vol.2にて詳しくご紹介したいと思います。




つづく




■株式会社北川本家

住所:京都市伏見区村上町370番地の6
URL:http://www.tomio-sake.co.jp/
オンラインショップ:http://www.shop-tomio.com/



■酒と米 おきな屋

住所:京都市伏見区村上町370番地の6
TEL:075-601-0783
営業時間:10:00~19:00
定休日:火曜日(年末年始・お盆休み有り)
    ※2018年11月~12月はお休みなし
URL:http://www.tomio-sake.co.jp/syouhin/okinaya.html

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