発酵を手軽に楽しむためのWEBマガジン

グラスを○○するだけ⁉ 家ビールが格段においしくなる4つの秘訣

は〜〜〜〜残暑厳しい……なんとかならないのかな……。

冒頭からバテバテの状態で失礼します、お酒大好きライターのおかんです。

朝晩は涼しくなりましたが、なんのかんのと10月くらいまで暑い最近の四季。ついつい仕事が終わったらアイツをキューッとやりたくありませんか?

そうですよね、ビールですよね!!

お酒の消費量が下がっているとはいえど、やっぱりビールはお酒のなかで1番人気。国税庁の調査によると国内で消費される酒類のうち、ビールが全体の31%ともっとも大きいパーセンテージを占めます(平成28年度)。

クラフトビールの一般化や、節約志向による「家飲み」のブームなど、ビールをとりまく環境と世間のニーズが少しずつ変わってきているのではないでしょうか。ついつい忘れがちですが、ビールも立派な発酵食品。人の生活のなかで、お味噌や醤油、パンなどに並ぶメジャーさかもしれませんね。

パッと買ってプシュッと開けて飲める気軽さがあるからこそ、家でビールを飲むとき、あまりおいしい飲み方を追求していませんでした。

今回、ビールの専門家に「家ビールの楽しみ方」をうかがってきました。突き詰めてみればどんなものにも道があるんですね、いつもの缶ビールがびっくりするほどおいしくなるヒントがいっぱいでした。

やってきたのはクラフトビールの専門店「クラフトハウス京都」。

築100年以上の建物を改装したビアバーで、京都駅から徒歩圏内ということもあり連日多くの人で賑わう人気店。

こちらに「ビールマニアすぎる店員さん」がいると聞きつけやってきました。なんでもビールが好きすぎて、家にビールサーバーを置いているほどのマニアなのだとか……。

榮川 貴之

大学時代にアルバイトをしていた「スーパードライ京都」でビールのおいしさに目覚める。以来、お金を貯めては渡欧し、各国でビールを飲み歩く。会社員生活を経て「23CraftBeerzNAGOYA(愛知)」で店長経験・「うしとらブルワリー(栃木)」で醸造経験を「HIGHBURY(新宿)」で生き方を学んで京都にリターン。現在は京都で独立開業すべく、「クラフトハウス京都」などのビール専門店を運営する株式会社カケザンで、1年契約で働きながら京都のことを勉強中。
好きなビールのスタイルはラガービールとランビック(家に100本ほど所有)。広島東洋カープファン。奥さん絶賛募集中。

家ビールの楽しみ方その1:缶の裏をチェック!

今日はよろしくお願いします。さっそく、家で楽しめるビールの秘訣を教えて欲しいのですが、榮川さんがまずはじめに市販のビールを選ぶポイントって何ですか?

僕がビールを買うときにまず確認するのは、缶の裏ですね。

缶の裏…??

缶を裏返すと、底に製造年月日や製造工場などの情報が書いてあるんです。製造年月日が新しいものほど、工場でつくられてお店に置かれるまでの時間が短い。つまり新鮮という事ですね。

え〜〜〜!?市販のビールって密封されてますよね!?それなのに新鮮さに差が出るんですか!?

パッケージングされた時点で限りなく密封されているのですが、日数が短ければ短いほど、劣化のリスクを避けられるんですよ。

劣化のリスクを避ける……??

どういうことかというと、ビールの大敵は高温・多湿・光です。高温下にさらされたり、直射日光を浴びるとたとえ未開栓の状態でもビールが変質するんですよね。香りや風味、泡立ちが悪くなってしまう。製造から1年経ったものと、半月程度のものだと、どちらが温度変化や日光のダメージを浴びている可能性が高いか。もちろんお店の保存状況も大いに関係しますが、より製造時の状態をキープできている可能性が高いということで、なるべく製造年月日が直近のものを選ぶようにしてます。

は、はえ〜〜〜〜。知らなかった……。そんなに味が変わるものなんですね。あ、でも家で飲み会とかしてて、飲み残しのビールっておいしくないもんな。あれは気のせいじゃなかったのか。

開封しちゃうともっと劣化は早まりますからね。もし暇があれば、同じ製造年月日で、日の当たるところに1ヶ月放置したビールと、冷暗所に保存しておいたビールを飲み比べてみてください。めちゃくちゃ差が出ますよ!

あと僕は、製造工場がどこかもチェックしますね。

せ、製造工場まで!?

いやあ、これはあくまで僕の感覚なんですが、製造方法が一緒でも、つくる場所の水によって微妙に味が変わる気がするんですよ……。旅行に行った際に「**工場のアサヒスーパードライ」とか「▲▲工場のキリン一番搾り」とか、ついついお土産で買っちゃいますね。

(予想の20倍くらいビールガチ勢だ……)

家ビールの楽しみ方その2:ビールごとにおいしい温度で冷やす

取材のために特別に持ち込んだ市販のビール。サッポロだけロング缶なのは、私が好きだからです。

一昔前まではビールといえば「チンカチンカのルービー」みたいなイメージがあったと思うんですが。

例え古ッ!!!

ええやんけ!……話を戻しますが、全てのビールがキンキンに冷やしたらおいしいかといわれると、多分違うじゃないですか。ビールごとにオススメの温度とかってあるんですか?

そもそもビールには、ラガービールとエールビールというカテゴリがあるんです。それぞれ、発酵させるための酵母が違います。ラガーは低い温度で働く酵母を使ってじっくり長時間発酵させ、キレイでスッキリとした味わいが特徴。エールビールは比較的高い温度で働く酵母を活発に動かして短時間で醸造するビール。酵母やホップ、モルトの香りが強く出ているのが特徴です。

ほうほう……。

一般的なラガーは5度くらいにキンと冷やして、綺麗な喉越しを楽しんでもらうのがオススメですね。ちなみに日本で製造されているほとんどのビールはラガービール。なので、家で楽しむなら普通に冷蔵庫で冷やしたものをグラスに注いでもらえればいいかと。

おもむろにビールをジョッキに注ぎ始める。

一般的にラガーは、注ぐとモコモコと泡が出るものが多いんです。泡ごと楽しむビールなんですね。で、温度が高いと綺麗な泡が出ないんですよ。

持ち込んだときの温度が高かったため「カニ泡」気味のビール。

温度が高いと「カニ泡」と呼ばれる大きさがマチマチの泡になるんです。口あたりが悪くなるので、ラガーは冷たくしておいたほうがいいというもうひとつの理由ですね。

エールはもう少し高いほうがいい?

5度よりは高いほうが、いいですね。各エールビールの持つ香りや甘み、苦味を感じられると思います。温度はそうですね……10度くらいかなあ〜。うーん。

個人の好みも「おいしい」には影響しそうですもんね。

そうなんですよ。エールビールでも、ホワイトビールはキンキンでもおいしいですし、ベルギー修道院ビールのように、ゆっくり時間をかけて飲むビールは温度変化による味わいの違いを楽しむため、あえて最初は低い温度で提供するってこともあります。なので、結局は好み……ということにはなっちゃいます。あくまで基準として、個人で自分の好みの飲みどきを追求して欲しいですね。

あと、特に無濾過のビールは底にオリが溜まるんです。買って家に持って帰るまでに振動でオリがビール内で舞っているので、飲む前日に冷蔵庫で冷やしてオリを沈殿させると、雑味のない味が楽しめますよ。

こ、細か〜〜〜!!!でもそういう細部においしさの秘訣があるのか……!

まあ、オリごと飲むのが好きという人もいるのでこれも好みなんですが。

家ビールの楽しみ方その3:グラスは絶対に清潔なものを

ビールの新鮮さ、特徴によってのおいしい温度……じゃあそれらを最大限に活かすグラスってなんでしょう?

そうですね……。まずどんな形のグラスであっても大前提なのが、絶対に清潔にしておくこと。

絶対ですか。

絶対です。

絶対なんですね?

絶対です。

力強よ……。

余談ですが、一応そのやりとりを想定してあえて汚れが付いた状態のグラスを持参したのですが、袋から出した瞬間に説明も聞かずに爆速で洗われました。ちょま……話を聞いて!!

まあグラスを清潔に保つことは当たり前といえば当たり前なんですが……。

ビールの泡ってとても繊細で、少しでもグラスに汚れ……とくに油汚れが付着しているとうまく泡立たないし口当たりも悪くなるんですよ。きれいなグラスに注がれたビールは、一口飲むごとにビールの泡がリング状に跡になります。

なりますね〜。あれって見てるだけでよりおいしく感じます。

きれいなグラスを保つには、まずスポンジがきれいでないとダメです。スポンジはグラス用と皿用で分けたほうが絶対にいい。食べ物のにおいなどもグラスにつかないですし衛生的ですね。

きれいな泡をつくるため……。洗った後はどうすればいいでしょう?布で拭いたり、冷凍庫でキンキンに凍らせたりとパターンがあると思うんですが。

「あ〜あんまりオススメしませんね」と榮川さん。

布で拭く必要はあまりないです。店でのディスプレイとしては布で拭いておいた方が見栄えがしますが、技術がない人が拭くと布と糸くずがグラスについたり、グラスか布に少しでも汚れが付着していると、拭くことによって汚れをグラスに擦りつけることになります。

なるほどー!!じゃあ、冷凍庫で凍らせるのはどうなんですか?

「家で楽しむ」という条件でかつ、個人的な見解でいうとそれもオススメしません。

そうなんだ……!

家によって差があるというのがオススメしない1番の理由なんですが、家庭の冷凍庫それ自体が清潔じゃない可能性があるじゃないですか。いろんな食べ物が中に入っているわけですし。それに、冷やし過ぎはビールの風味を感じにくくなり、グラスが結露することで泡立ちも悪くなります。

グラス専用のスポンジで洗って自然乾燥、そのうえで飲む直前にグラスをすすぐといいと思いますね。実際、当店でも提供の直前にグラスを専用のウォッシャーで水洗いしています。

お店では注文後、ビールを注ぐ前に水が噴射する専用のウォッシャーでグラスを洗う。

家ビールの楽しみ方その4:香りが立ちやすいグラスで味がUP

左がお店で使用しているグラスのひとつ、右が持参した小さいビアグラス。

さらに、おいしさを追求するなら、グラスも変えてみるといいと思いますよ。とくにクラフトビールは香りに個性のあるものが多いので。

左のグラスはなんだかワイングラスの足を取ったような形状ですね。

違いを感じるために、それぞれに同じビールを注いでみましょう。

と、いうわけでお店のビールを入れてもらいました。アンバーの色合いがめちゃきれい。

じゃあまずは小さいグラスから……。

グビ

わ〜、おいしいクラフトビールの味がします。

じゃあ、大きなグラスで飲んでみてください。

お、お、お〜〜!!??

香りが!!!全然違う!!!

でしょう。

ビールを口に含む前から濃醇な甘みが鼻腔をくすぐる〜〜〜!穀物を焦がした……そう、トーストのキツネ色の部分みたいな香ばしい苦味が口いっぱいに広がるし、メープルシロップに似た甘みも感じる!!

とにかくマジで別物のレベルにおいしい〜〜!!!!

グラスひとつでこんなに変わるのか……。

香りを楽しむためには、まずビールの縁が広くあること。口と鼻が入るくらいの大きさだと、舌で感じる味だけではなく香りもプラスされます。とくに、ワイングラスのように丸みのある形だと香りがグラスのなかで回って立ちやすいですね。

家でクラフトビールを飲むことがある人はひとつくらいこの形のグラスを買っておくべきかも。小さいグラスで飲むと、ビール本来のおいしさが100%出せないな……。「クラフトビールってそんなにおいしい?」って人は、グラスがそれに向いてない可能性があるわ……!

しかもグラスが薄いから、唇と液体の距離が近いぶん味をダイレクトに感じるというか。

普段、同じビールを違うグラスで飲み比べるようなことがないのでこれは驚きだ……。帰ったら速攻でビールグラス買おう。

お店では、大きさの異なるグラスを使い分けていますが、小さいグラスでも口と鼻がグラスの縁の輪っかに入るサイズ。いろいろ考えられてる……!

少しのこだわりで、家ビールは格段においしくなる

いや〜〜〜〜もう!ビールってうまいな〜〜〜〜!!!

店だけでなく家でも気軽に飲めるからこそ晩酌のトップバッターとなっているビール。気さくにグビグビやってばかりでしたが、少しのこだわりを持つことで、大手の缶ビールのような「いつもの味」もクラフトビールのような「ちょっと特別な味」も、何倍にもおいしくなることがわかりました。

おお、美しいグラスが作り出す見事な輪っかよ……。

まあ、そりゃあこだわればおいしくなるってわかってたけど、ここまで明確な差を見せつけられたらもう後戻りできない……。グラス買ってスポンジ新調しよう。

後日、お店にあったなかで最も新しい商品をじっくり冷やして、口の広いグラスを新調したスポンジで洗いまくってビールをいれてみました。「極上!」というにはまだまだスキルが足りなかったけれど、泡立ちも味わいも普段よりも格段にアップした一杯が完成!

どこでも買える缶ビールだって少しのこだわりでちょっとリッチに。みなさんも今夜から少し手間をかけて、晩酌のワンランク上げてみませんか!?

CRAFTHOUSE KYOTO
(クラフトハウス京都)

HP:https://crafthousekyoto.com/
Facebook:https://www.facebook.com/crafthousekyotojapan/
Instagram:crafthousekyoto
住所:京都市下京区大宮町211番
TEL:075-708-8200
営業時間:11:00~24:00
定休日:なし