INTERVIEW

【菱六・助野彰彦社長インタビュー】伝統あるもやし屋の社長が語る、発酵文化の未来とは・後編

日本の発酵文化の礎でもある種麹。

目には見えない小さな小さな菌が、大事に育てられたことで生み出される旨味は、昔から、日本の食に欠かせない大切な存在です。

麹の力を生かし生み出された食べ物は美味しいだけでなく、体にも良いことから、人類の健康をも支えてくれています。

そんな発酵文化を力強く支え続けている「菱六もやし」さんの助野彰彦社長へのインタビュー。

後編では助野さんが発酵業界に飛び込んだ経緯と、発酵文化の未来についてお聞きしました。

きっかけは就活?!300年の伝統を受け継ぐまで

これだけ長きにわたる歴史と伝統があるのだから、幼いころから麹に慣れ親しみ、後を継ぐことを決意されていたのかと思いきや、意外や意外、22歳になるまで家業について知らなかったのだそうです。

「東京の大学に通っていたのですが、就職活動の面接のために京都に帰省したんです。その時に両親からたまたま話を聞くまで、家業が種麹屋であることは知りませんでした」

突然、家業について聞き驚くのは当たり前。

どうしようかと悩んだすえ、占い師さんにこのことについて相談したのだそうです。

その方に「家を継ぐなら、勉強したほうが良いのでは?」と言われたこともあり、ひとまず勉強してみようということで、醸造学科のある東京の大学で2年間みっちり学ぶことにしたそうです。

「醸造学科は短大だったので女性に囲まれながら楽しく勉強しました」

と冗談交じりに話してくださる助野さん。

就職活動のときに不意に聞いた話から発酵業界に飛び込むという なんとも朝ドラのようなドラマチックな展開に驚かされました。

変わっていくもの、変わらないもの。数字だけでは測れない世界

こうして家業を継ぐことになった助野さんですが、ただ受け継ぐだけではなく、時代に合わせてより良いものを生み出そうとされています。

長い伝統と歴史があることから、時代に合わせた変化に対して保守的かと思いきや、チャレンジ精神も豊富な方です。

「菌・米・麹蓋以外は、より良いもの・適したものに変更しました」とのこと。

麹は生き物なので、全部同じ通りにやっても同じものはできない、だからこそ、気候や気温、時代の流れや動向に合わせてより良いもの、適したものを使わなければならないと考えておられるそうです。

日々麹と向き合う中での心がけは、「生やしているものを見ること」。

どういうことかと言うと、

例えば、麹を育てる上で、必要不可欠な温度管理。

もちろん適正な温度に調節することは大切ですが、「数字だけを見て判断するのは良くない。

数字だけではわからないもやしの育ちを見ることが大切」なのだそうです。

適正な温度でも育ちが悪かったり、逆に育ちすぎてしまったりすることがあります。

生き物だからこそ、数値では測りえない部分があり、数字にとらわれてしまうと、数値化できない部分を見逃してしまうかもしれないからです。

美味しい発酵食品を生み出すための全ての源となるもやしを育て続けてきたからこそ、わかることですね。

発酵界の未来を支えるために。

最後に、今後の展望について尋ねてみました。

「もやし屋はできることが限られているので、まずはもやしづくりをしっかりとすることですね」

麹を使った発酵食品の源である「もやし」。

全てはここから始まっていて、守り続けるためにもしっかりと日常に根差した仕事をしていきたいと語る助野さん。

「それに良いもやしをつくれば、良い発酵食品ができる。美味しい発酵食品を食べて興味を持ってもらえれば、巡りめぐって発酵の源であるうちに返ってきますしね」

と、笑顔でお話される姿が印象的でした。

「発酵食品は知っていても、麹についてはまだあまり知らない人も多いです。そもそも業者さん相手の商売ですしね。なので、講演会やワークショップで麹づくりを体験してもらうことで業者さん以外にも間口を広げて、菱六もやし、ひいては麹ファンを増やすことができれば、と思っています」

そう語る助野さんのまなざしは、発酵界の未来を見据えており、発酵文化を支えていくという強い意志を感じずにはいられませんでした。

■菱六もやし

住所:京都市東山区松原通大和大路東入2丁目轆轤町79
TEL:075-541-4141




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