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湖のスコーレとは
皆さん、滋賀県長浜市にある「湖(うみ)のスコーレ」をご存じですか? 2021年12月にオープンした「発酵」をテーマに学びを体験できる商業文化施設です。
大きな湖をふところに抱えた滋賀県では、親しみと敬意を込めて、琵琶湖を「うみ」と呼ぶことから、「湖(うみ)のスコーレ」と名付けられそう。
今回はそんな話題の施設に行ってきました!
湖のスコーレはJR長浜駅から歩いて15分ほど、レトロな町家から、趣のある老舗、話題のカフェなどが並ぶ北国街通り近くに位置します。
入口のとびらには、湖のスコーレのロゴデザインも手掛けたミナ ペルホネンのデザイナー皆川明さんのイラストも。
そのとびらを開けて、気になる施設内を見学したいと思います!
湖のスコーレってどんな場所?
「湖のスコーレ」のフロアは大きく2つ、
メインフロアと文化棟にわかれています。
ストア
入ってまず目の前に広がるのが、洗練された空間が広がるストア。家具やファッション、生活雑貨から食品まで、約2000ものアイテムが棚を飾ります。
アイテムは奈良県にある「くるみの木」が、このストアのために全国から集めたものや、新たに開発した商品たち。どれも生産者の拘りが詰まったセレクトアイテムです。
また、ストアには期間限定の企画展も。2022年6月1日時点では、選りすぐりの子供向け商品を集めた「つよいこ展」が開催されていました。時期によって企画内容が変わるので、何度来ても楽しめますよ。
体験教室
体験教室ではチーズや味噌づくりのワークショップや料理教室など、食の分野を中心に色々なプログラムが実施されています。
中でも一番人気は、ハッピー太郎さんの「10日でできる!白味噌教室」。つくるお味噌は、蒸した大豆と麹を混ぜてつくるさっぱりとした味わいのもの。琵琶湖の沖島で庶民の白味噌として知られているそうで、京都の白味噌とはひと味違うのだとか。
毎月異なったイベントを開催しているようなので、ぜひチェックしてみてください。
発酵スタンド
湖のスコーレ提供
体験教室の隣に併設されているのが発酵スタンド。通りに面したスタンド型のカフェで、発酵バターと自家製フロマージュのシュークリームや、発酵生姜のチャイなどが楽しめます。
現在は土日祝のみオープンとのこと。客席もあるので、長浜市巡りの小休憩にも利用できそうです。
チーズ製造室・熟成庫
滋賀の竜王町にある「古株牧場」監修のチーズ製造室。牧場で研修を受けた湖のスコーレのスタッフたちがチーズを製造しています。写真は熟成庫に並んだセミハードのチーズ。
4カ月ほど反転作業を繰り返し、熟成したものが商品として並べられます。
熟成庫はガラス張りになっているので、チーズの変化を見て楽しめますよ。
スタッフさんたちが愛情をかけて育てたチーズは、ストアや喫茶室で味わうことができます。
醸造室
以前の記事でご紹介した醸造家・ハッピー太郎さんが、味噌や甘酒、どぶろく醸造を行う醸造室です。
醸造室はガラス張りなので、普段は目にすることのないお酒づくりの作業風景が見れますよ。
糀室では、手づくりの完熟糀がつくられています。タイミングが良ければ、ハッピー太郎さんが作業されているところに立ち会えるかも。
醸造室でつくられた味噌や甘酒、どぶろくはもちろん購入可能。どぶろくは試飲することもできましたよ。(300円から)ハッピー太郎さんのお話を聞きながら、発酵の世界に浸れる贅沢な空間です。
喫茶室
湖のスコーレに併設されている喫茶室。大きな窓から庭を眺めることのできる、開放的な喫茶室です。こちらでは、施設内でつくられたチーズや味噌をはじめ、県内の食材をつかったメニューを楽しむことができます。
季節野菜とへしこのドリア 糠バター添え / 近江牛の伊吹山発酵カレー
「季節野菜とへしこのドリア 糠バター添え」は酒粕のコクとチーズがマッチした、味わい深い一品。糠バターが溶けて馴染むと、よりいっそう奥深い濃厚な口当たりを楽しめました。
「近江牛の伊吹山発酵カレー」はマイルドな優しいカレー。辛いものが苦手な方にもおすすめです。ライスの形は、伊吹山に見立てているのだとか。また、鮒寿司の飯(いい※1)ものっており、滋賀ならではの発酵食品も味わえます。
※1 鮒寿司を漬けるためのまわりのごはん
スコーレチーズの盛り合わせ / 米麹チーズケーキ
「スコーレチーズの盛り合わせ」では3種のチーズが楽しめます。
ストアで購入できる人気商品「竹炭フロマージュ」「みそフロマージュ」や「よもぎのセミハードチーズ」を食べ比べできますよ。
よもぎのチーズは、薬草の里として知られている伊吹山をモチーフにつくられたもの。よもぎとチーズが調和して一体となっており、ほどよい苦みがクセになる美味しさでした。
「米麹のチーズケーキ」は米麹の食感を楽しめるチーズケーキ。
断面にみえる粒々は全て米麹なんですよ。チーズケーキ本来の甘さと、麹由来の奥行きのある甘みがふわっと広がります。食感と味わい、両方で麹を楽しめるケーキです。
▶文化棟
図書印刷室
図書印刷室には、およそ3000冊の新刊書籍と古書が並びます。
そのラインナップは体験教室で講師を務めた方の関連書籍や、彦根市の「ミッツファインブックストア」がセレクトしたものたち。休日はお子さんに読み聞かせをしている家族連れも多いそうです。また、書籍コーナーには環境に優しいライスインク(環境に配慮した米糠油のインク)を使用した「リングラフ印刷機」も設置されており、カフェのメニューなどはこちらで印刷されているそうです。
ギャラリー
文化棟奥の小部屋と2階のギャラリーには、滋賀県甲賀市の福祉施設「やまなみ工房」の方の作品が展示・販売されています。
今では国内外で注目されるアールブリュットの作品としても知られていますが、アートを作ろうとして生まれた作品ではなく、利用者さんたちが自分たちらしく過ごせることを大切にした結果生まれた作品たちです。
展示内容は、月替わりで入れ替わるそうです。
湖のスコーレが届けたいもの
施設を見学したあと、広報・高本さんに湖のスコーレについての想いや拘りを伺いました。
Haccomachi- 施設内を楽しめる工夫が随所に散りばめられており、老若男女、誰でも満喫できる長浜市の新たな観光スポットになりそうですね。
高本さん- ありがとうございます。
SNSなどでも、それぞれの方が感動したポイントをあげていて楽しんでくれているんだな、というのを感じます。
文化をつなぐ場所に
Haccomachi- 湖のスコーレは、どのような背景でできたのでしょうか?
高本さん- かつて「黒壁運動」と呼ばれる街づくり運動で観光地として発展してきた長浜の中心市街地の再開発事業の一環として計画がスタートしました。長浜市は、湖や山など豊かな自然に囲まれた良いところなのですが、若い方が移住してまで住みたいという魅力は少なかったんですよね。
それを打破するためには、そこで働きたいという仕事があったり、オープンなコミュニティがあることが重要だと思ったんです。それを担う場所として湖のスコーレが生まれました。
Haccomachi- なるほど、湖のスコーレは長浜市の町おこしの一環としてできたんですね。
高本さん- はい。ただ、単なる商業開発ではなく、商業文化開発として、文化を学び育むことのできる場所にしたいという思いもありました。
そこで、施設の監修をしてくださった空間コーディネーターの石村由起子さんとも話し合い、滋賀の食文化「発酵」に着目しました。ただ買い物を楽むだけの施設ではなく、「発酵」をキーワードに、学びのきっかけが得られる場所を目指しています。
スコーレに込めた想い
Haccomachi- 確かに、体験教室や図書印刷室など、学べる空間があるのは、湖のスコーレの大きな特徴ですよね。
図書印刷室では印刷ワークショップなども開催されている
高本さん- そうですね、施設名の“スコーレ”はギリシャ語で「学校」という意味なんです。
湖のスコーレでの学びは、先生がいて一方的に教えを乞うかたちではなく、双方が学びあえるスタイルを目指しています。実は、湖のスコーレのスタッフは販売だけでなく、製造の現場を経験するんです。自分たちでつくったものを売ることで、スタッフにも学びの機会を得てもらいたいと思っています。
心が動いたものを持ち帰る
Haccomachi- 最後に、これから施設を利用される方へメッセージをお願いいたします!
高本さん- 湖のスコーレは、ここに来れば何か面白い発見や気づきがあると予感してもらえる場所でありたいと思っています。
例えば「発酵」に関しても様々な発見や気づきのきっかけをさりげなく用意しています。生活への取り入れ方も人それぞれ。例えば、できたものを食べたい方には、物販・発酵スタンド・喫茶店が、一から自分で手づくりしたい方には体験教室が、知識から得たいという方には、図書印刷室などがあります。
まずは、皆さんが興味・関心のあるものから、発酵の世界を楽しんでいただければと思います。
Haccomachi- 発酵って最初は手間がかかって大変そう、と思う方もいるので、手軽に採り入れ体感することができるのは嬉しいですね!
高本さん- はい、私自身、湖のスコーレを立ち上げるまで発酵が身近な存在ではありませんでした。でも、ここで働くようになり、どぶろくやチーズづくりを通して発酵のちからを間近で感じることができ、全く知らなかった新しい世界を開くことができました。
皆さんにとっても湖のスコーレが学びのきっかけを得られる場所になれば嬉しいです。
Haccomachi- 自分は何に心が動くのかを実感でき、またそれをすぐに採り入れられる工夫が沢山あるのが、湖のスコーレの魅力ですね。
今回は本当に有難うございました!
湖のスコーレはここで作られたものを使ったり、味わったり、体験したりすることを通して、それぞれの生活に学びを持ち帰ることができる場所でした。
また、スタッフ自身が作り手目線でものの良さを伝えてくれて、生産者と距離が近いというのも大きな特徴です。
まさに、「発酵」というキーワードから滋賀県の文化の継承も兼ねている、文化商業施設だということを実感しました。
今後も、湖のスコーレは様々なクリエイターとのコラボなど、色々なことに挑戦し、進化し続けるとのこと。
これからも目が離せない注目の発酵スポットですね。
ぜひ皆さんも、日々の暮らしを豊かにするための学びを、湖のスコーレから持ち帰ってみてはいかがでしょうか。
所在地:滋賀県長浜市元浜町13番29号
営業時間・店休日:11時~18時(喫茶室は11時~17時)、毎週火曜休み