日本酒コンシェルジュに聞く
■vol.1 学べば世界が広がる!日本酒の世界
■vol.2 初心者でもハズレない日本酒の選び方
■vol.3 日本酒の土台は「酒米」にある!?
■vol.4 世界が変わる!おすすめ日本酒3選
引き続き、日本酒コンシェルジュのPonさんのインタビューです。
今回はPonさんが日本酒を好きになったきっかけや、自分好みの日本酒の見つけ方について教えていただきます。
日本酒との出会い
日本酒コンシェルジュとして精力的に活動されているPonさんですが、実はお酒自体そんなに好きではなかったのだとか。そんなPonさんが日本酒にはまったきっかけをお聞きしました。
Pon もともと友人と食事に行くときに少し飲むくらいで、お酒自体そんなに好きではなく……。自宅で1人で晩酌したりすることなんて絶対になかったんです。
が、大学卒業を控えた冬に友人宅で鍋をしたとき、日本酒にはまっている友人に飲ませてもらった日本酒に驚いたんですね。
─ それがめちゃくちゃおいしかったと?
Pon そういうことです!銘柄は「喜楽長」の純米酒でした。今まで、日本酒って酒豪の人が飲むイメージだったので、「あれ?日本酒ってこんなにおいしいんだ!」と思ったことを今でも鮮明に覚えています。
─ そこから深みにはまっていったということですね。
Pon そうですね。その後、居酒屋で初めて日本酒を注文しました。「八海山」の本醸造だったのですが、こちらにもまた衝撃を受けたんです。
第一印象の味わいから、余韻までの味わいが綺麗に変化していく感じ、日本酒の美しい曲線を実感し、日本酒はすごい飲み物なのかもしれないと思うようになりました。
─ なんともドラマティックな出会いですね。
Pon その時は酒屋と言ったらリカーマウンテンさんしか知らなかったので、そちらの日本酒コーナーでお酒を買うようになりました。銘柄やメーカーについて全く分からなかったので、四合瓶で1,000円前後を目安に購入していましたね。
自分なりに試してみているうちに「もっと色々飲みたい!」と思い、ネットで日本酒の取り扱いが多い酒屋を調べたら、京都の五条にある名酒館タキモトさんがヒットしたので、すぐに駆け込みました。
そこから、毎日晩酌するようになって、お酒に合いそうなおつまみを作ったりするようにもなり、すっかりはまってしまったという訳です。
─ じゃあそこからずっと一途に日本酒のことが好きなんですね。
Pon お酒を飲むと酔っ払って、その日は何もできなくなってしまうのが嫌で、一時期日本酒から離れていた時期がありました。
でも、その一方でもっと飲んでみたいという気持ちもあったのでネットや雑誌で調べたところ、滋賀・石山の日本酒の種類が豊富なお店を見つけました。
そこで日本酒について色々教えてもらい、日本酒の面白さを再認識し、そこからまた魅了されて気が付けば日本酒コンシェルジュとして活動することになり今に至ります。
日本酒コンシェルジュとしての活動のきっかけ
─ 日本酒コンシェルジュとして活動されることになったきっかけを教えてください。
Pon 日本酒にはまってからは、日本酒関連のイベントに積極的に参加していました。
そのなかで同世代との出会いが少なかったことや、周りにあまりお酒を好きな人がいなかったので、「こんなにおいしくて面白いんだから、その魅力を広められたらいいな」と思うようになりました。
その思いから、自分の好きなコンセプトで日替わり店長として出店することのできる魔法にかかったロバというお店で日本酒をテーマに日替わり店長をさせていただきました。
そのイベントに、日本酒コンシェルジュ通信を運営されている代表のUmioさんがたまたま来られて、「若い年代にもこういう風に日本酒を好きな人がいるんだな」と思って声をかけてくださったそうです。
そこで日本酒コンシェルジュについてや、その考えなどを聞いて「すごく素敵だな」と思ったので賛同し、日本酒コンシェルジュとして認定していただきました。
─ そんなPonさんにとって日本酒の魅力とは?
Pon 古くから日本で造られ日本の各地で醸されているところですね。自分の住んでいる地域に酒蔵があるかもしれないし、もしあれば、どんな場所で造られているのか、どんな人が造っているのかを知ることができる。
たとえば、海外産のワインを飲んでも造り手の顔は見えづらい。日本酒であれば、全国各地どこかしらに日本酒の蔵があるので、自ら足を運んでその地を知ることができるのでおもしろいですよね。
─ 日本酒の味わいに関してはどういうところに魅了を感じているのですか?
Pon 味わいに関しては「多様性」と「複雑性」があるところですね。
日本酒と言ってもフルーティーなタイプなものもあれば、大人っぽいものや、スパークリングタイプ、ウイスキーのような熟成酒もあれば、異次元の味わいがする玄米酒まである。ほかのお酒の種類にはない「多様性」に面白さを感じています。
日本酒を極めるための資格とは
─ 日本酒好きと聞くと、「利き酒師」などが思い浮かぶのですが……。
Pon 利き酒師は日本酒に関する最もポピュラーな資格ですよね。筆記試験やテイスティングの試験があり、提供方法などの知識も問われます。
また利き酒師の上位資格に「酒匠」といって、テイスティング分野に特化したプロとしての能力が問われる資格もあります。有資格者は300人くらいだったと思います。
─ そんなに少ないんですね!
Pon また日本ソムリエ協会が2017年度から発足した「J.S.A. SAKE DIPLOMA認定試験」なんていうのもあります。こちらも筆記試験やテイスティング、論述試験などが行われます。
─ こうしていろいろと勉強されているPonさんに、ぜひ好みの日本酒の見つけ方を教えていただきたいです!
Pon そうですね。片っ端から色々なお酒を飲んでみるという手もありますが、まずは味わいでカテゴライズされた日本酒の4つのタイプを意識して飲んで見るのがおすすめです。
─ 日本酒のタイプですか?
Pon 華やかなフレーバーが特長の「薫酒」、軽快・なめらかで新鮮な清涼感のある「爽酒」、複雑な熟成した香りをととろりとした甘味と旨味が特長の「熟酒」、米そのもののふくよかな香りとコクのある味わいを楽しめる「醇酒」の4タイプに分類されます。
もちろん、すべてのお酒がこの4タイプに当てはまるわけではないので一概には言えないのですが、大きく分けるとこの4タイプになります。
それぞれのタイプを飲み比べて好みのものを見つけてから、それと同じタイプのものをいろいろ飲んで、自分の好きな傾向を確立していくのが良いのではないでしょうか。
また日本酒の味わいは、温度帯はもちろんのこと、酒器・グラス、体調や雰囲気などによって左右されます。
例えば、自分が実際に訪れたことがある蔵のお酒だったりすると、おいしく感じたりもしますよね。そういう、先入観も大切にしてもらえたらと思います。
─ 色んな要素が重なり合って日本酒の味わいを作り上げているんですね。
Pon そういうところが僕は好きなんです。見た目はこんなにシンプルなのにも関わらず、味わいやその歴史は複雑で奥深い。そういうところも日本酒の魅力です。
─ そういえば、熱燗のことを「お燗」と言われるのはどうしてですか?
Pon 熱燗というと50度くらいに温めたお酒のことを指すんです。
55度以上で「飛びきり燗」、45度近辺で「上燗(じょうかん)」、40度前後で「ぬる燗」、35度前後で「人肌燗」、30度前後が「日向燗(ひなたかん)」というふうに温度帯によって表現が代わります。
逆に冷酒だと、5度前後が「雪冷え」、10度あたりが「花冷え」、15度前後で「涼冷え(すずひえ)」などといった表現をするんですよ。
温度帯で風味や香り、味わいが繊細に変わるのも日本酒の繊細でおもしろいところですね。
─ 温度だけでもいろんな呼び方があるんですね!
Pon また酔いやすさに関わらず、「和らぎ水(やわらぎみず)」、いわゆるウイスキーで言う「チェイサー」を合間に飲んで、代謝に必要な水分を補給してくださいね。
アルコールを摂取することで利尿作用が起こり、体内の水分が減ってしまうので、水分補給は大切です。
大体飲んだ日本酒の量の2~3倍くらいの水を飲むのが良いと言われています。お酒を飲む間に水を挟むことによって、飲むお酒の量も調節できますからね。
また和らぎ水の温度ですが、体を冷やすとアルコールの代謝が遅れてしまうので、常温のものをおすすめします。
合間にお水を飲むことで口の中のリセットもできますし、違うお酒を飲むときには、風味や味わいを比べて楽しむこともできるので大切ですよ!
─ チェイサーのことを「和らぎ水」と表現するのも素敵ですね。
Pon お店によっては日本酒を造るときの仕込み水を和らぎ水として出してくれるところもあります。
もちろん普通のミネラルウォーターでも問題ないですが、仕込み水を出してくれるお店は粋で面白いですよね。
日本酒好きが高じて、ついには日本酒の原料となる「酒米」にまでその知的好奇心の幅を広げられているそうです。
普段食べているお米と同じだと思っていたのですが、日本酒造りに適したお米があり、地域ごとにその開発に力を入れているのだとか。
次回は酒米やお酒の熟成についてお話をお伺いします。
vol.3へつづく。
■PROFILE
Pon
友人に勧められた日本酒を飲み、電撃が走る。その一杯に出会い、日本酒の魅力にとりつかれる。飲み方スタイルは、お酒に寄り添い語り合う。自家熟成家。日々思うことは、「日本酒を支えてきた全ての文化と人々に今日も感謝」
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