ここ数年、K-POPや韓国コスメの人気が高まっており、その勢いが衰える気配はありません。京都の街にも韓国料理店が増え、気軽に本場の味を楽しめるようになってきました。
以前Haccomachiでも、「キムチ」を取り上げ、そもそもどんな食べ物なのか、どんな風に味わうのがおすすめかなど、ご紹介しましたが、今回は、その発展版!
キムチの魅力を知り尽くす韓国料理店のオーナーに直接お話をうかがうことができたんです。
さらなるキムチの魅力をお伝えしていきます!
キムチは韓国のソウルフード
今回お邪魔したのは、「アジョシ 三条タカセ店」さん。河原町三条から鴨川・三条大橋へと向かう南側にある、100席以上もある大きなお店です。
お話を伺うのは、アジョシを運営する株式会社 チャングーの張本社長です。
─ こちらのお店、とっても広いんですね!
張本 このお店は、コロナ禍のさ中のなかなか海外旅行に行けない時にオープンしました。
なので、ご来店いただいて韓国気分を味わってほしい、そしてコロナが収束した時には大人数で集まれる場所にしていただきたいと思い、1フロアの大きな店舗を作りたかったんです。
─ ポップでカラフルなネオンサインなど、写真を撮りたくなるスポットがたくさんありますね★
張本 本場に近い雰囲気でお料理を楽しんでいただきたくて、内装にもこだわりました。
ネオン管は、韓国から輸入したガラス製ネオン管を使っています。
まぶしすぎない、ふんわりとした光り方なんですよね。ノスタルジックな雰囲が気に入っています。
─ SNSにUPしたくなりますね。チャミスルのボトルも光が反射してキレイです!
─ では、キムチのお話も伺っていきたいんですが、こちらのお店には、キムチを使ったお料理はどのくらいあるんでしょうか?
張本 キムチチヂミ、キンパ、スンドゥブ、豚キムチ鍋、サムギョプサル、焼きキムチなどにキムチを使っています。
─ たくさんのお料理に使われているんですね。すべてのお料理に同じキムチを使っていらっしゃるんですか?
張本 いえ、キムチはお料理により使い分けています。
①フレッシュなもの ②少し熟成させたもの ③しっかりと熟成させたもの の三段階で熟成度を管理しています。
温度変化が頻繁に起こるとえぐみが出たりするため、味を確かめる時以外は開閉しないキムチ専用の冷蔵庫で保存しています。
熟成と共に乳酸発酵が進み、アミノ酸等の旨味成分や酢酸、乳酸が生まれて複雑な旨みが加わり、独特の風味が増加します。
キムチの酸味のもとは酸や乳酸で、酸っぱいキムチにはたくさんの乳酸菌が含まれていると言えます。
─ (①②③を試食して)フレッシュなものは、白菜の食感や瑞々しさがあって、あっさりと食べやすいですね。 少し熟成は、程良い酸味と旨味、辛さのバランスが絶妙です。
張本 キムチは、もともとは厳寒期のための保存食として作られた野菜の塩漬けでした。
そこに香辛料を加えるようになり、唐辛子を使った辛いキムチが一般的になり、地域や家庭によって様々な配合で作られるヤンニョムに野菜を漬け込んで発酵させる形となったようです。
真ん中のタイプは、ヤンニョムに含まれている魚醤や魚介、野菜の旨味と乳酸の酸味が程よくなじんでますよね。
─ しっかり熟成は、水分が抜けていて、酸味がかなりしっかりしていますね。
かすかに燻製香のようなニュアンスも感じられます。私は少し熟成が一番好きです!
3種類をどんな風に使い分けているんですか?
張本 フレッシュなものは、「キムチ盛り合わせ」のような形でお出ししてそのままで召し上がって頂きます。
─ (試食して)お野菜のフレッシュ感やおいしさにヤンニョムの旨味が加わって、いくらでもいただけそうです!
張本 少し熟成させたものは焼き物・炒め物に使用します。
例えば、キムチチヂミにはこちらのタイプを使っています。
─ (試食して)キムチの部分をいただくと程良い酸味があり、キムチが入っていないチヂミと比べてコクがあるように感じられます。
玉ねぎやニラがたっぷり入っていて揚げ焼きされているので、外はクリスピーで中はふんわりしていますね。
タレをつけなくても美味しいです!
張本 しっかりと熟成させたものはコクと深みがあるので、キムチ鍋などスープ系に使います。 このスンドゥブにも使っています。
─ (試食して)スープがとてもまろやかなんですね~。
辛そうな色合いなのに、辛みが鋭角的じゃなくて、キムチの旨味がしっかりと溶け込んでいる感じがしました。
張本 それから、唐辛子を使わない白キムチは、冷麺に使っています。
─ 白キムチというのがあるんですか?
張本 はい、唐辛子を使用わないキムチです。マイルドでまろやかな酸味がより感じられてさっぱりしています。
パリパリした食感も魅力です。
─ 細かく使い分けられているんですね!
私は、そのまま食べる場合も、豚キムチを作る時も、キムチチゲを調理する時も、とにかくキムチを使いさえすればキムチ料理になると思い同じキムチを使っているので、驚きました!
もしかすると、日本で薄口醤油と濃口醤油と刺身醤油を使い分けているのと同じような感覚なのかもしれません。適材適所ということですね。
張本 キムチは、高麗時代の文献にも登場するほど⾧い歴史を持つ発酵食品で、韓国人の食卓に欠かせない食べ物ですからね。
─ だからこそ熟成度合いによる味わいの違いを大切にし、特徴を最大限に楽しむよう、使い分けられているんですね。
張本 そうですね。2013年に、1年間に食べるキムチを冬の間にまとめて漬ける文化“キムジャン”がユネスコ人類無形文化遺産に登録されました。
特定の民族や地域に残るほかの文化遺産とは異なり、キムチは韓国の全国民が継承している、韓国のソウルフードと言えるのではないでしょうか。
─ 以前は、11月になると、給料一か月分の「キムチボーナス」を出したり、「キムチ休暇」を設けたりする会社もあったと聞いたことがあります。
キムジャンは長い場合は3日間、4日間行うこともあるそうですね。
張本 重労働ですよね。白菜の葉1枚1枚に根元の方までしっかりと丹念にヤンニョムを塗り込んでいくので。
最近は、キムチを自宅で漬けずにスーパーなどで購入する家庭が増え、キムジャンを行う家庭が減ってきているようですが、やはり、手作りの味に勝るものはありません。
キムジャンは、今なお韓国の女性たちにとって1年を締めくくる一大行事となっています。
─ 世界文化遺産である“キムジャン”をいつかこの目で見てみたいです!
それから、家庭でキムチを美味しくいただくアレンジ方法を何か教えていただけますか?
ちなみに、Haccomachi編集部の推しは以前キムチの記事でお伝えした「納豆にプラス!」です。
アボカドやブロック状にカットしたチーズとも相性抜群です。
張本 いいですね。キムチは本当になんにでも合うんですよね。万能です。
例えばお好み焼きに入れてもいいですし、冷奴のトッピングにもおすすめです。
少し変わったところだと、刻んだキムチを卵サンドのフィリングに入れると、酸味・コクや食感が加わって美味しいですよ。
いろんな食材と相性が良いですが、やはり重要なのはキムチ選びです。
韓国で漬けられた、乳酸発酵して作られたキムチを選んでもらいたいですね。
─ キムチを買う際の “発酵したキムチ”の見分け方も、Haccomachiのキムチの記事でご紹介していますので、参考にしていただきたいです。
京都冷麺のおいしさを世界へ
─ では次に張本社長が手掛けていらっしゃる「アジョシ」についてうかがいます。「アジョシ」というのは「おじさん」という意味だそうですね。
ロゴマークの男性は張本社長ですよね♪
現在、京都市内に5店舗、東京に1店舗展開されていますが、なぜこのビジネスをスタートされたのでしょうか?
張本 30歳の時にこの事業を始めました。
それまでは、自分に何ができるか、何を成し遂げたいかということをさほど深く考えていなかったんです。
しかし、自分のやったことで周囲の方が喜んでくださり、その方々からさらに社会に喜びが広がっていくような仕事をしたいと思い始めました。
そんな中、自分に何が伝えられるか?と考えた時、これだ!と思ったのが、幼少期から食べていた家庭の韓国料理のおいしさを全国の、世界中のみなさんに楽しんでもらえたらということでした。
─ イチオシメニューは何ですか?
張本 アジョシが誇る「京都冷麺」です。
韓国では、冷麺は「美食家の食べ物」と言われています。
素材のおいしさを活かして食べる料理なので、味わいが繊細なんですよね。
張本 冷麺はその昔、お寺などで精進料理のように提供されていたそうです。
麺は、蕎麦の実や松の実をすりこぎ状のものですりおろし、その場で打ち立てが食べられていたようです。
スープは、牛スネ肉と野菜でとったもので、噛めば噛むほど感じられる麺のおいしさや麺とスープの相性を楽しむ料理です。
今まで、第一次・第二次・第三次韓国料理ブームがありましたが、冷麺って、まだまだその瞬間にしか食べられていないと感じていました。
また、私自身「これぞ!」と思える冷麺にめぐり会えていませんでした。
そこで、私が冷麺の達人と仰ぐオモニのお店で1年間修行させていただき、アジョシオリジナルの冷麺を完成させました。
その冷麺を通じて、繊細な冷麺文化をより多くの方に楽しんでいただきたいと思っています。
─ 「京都冷麺」にはどんな特徴がありますか?
張本 一番の特徴は、一切の作り置きがないことです。
オーダーをいただいてから職人が手作業で麺を打ち始めます。
蕎麦粉と小麦粉を独自の割合で配合した麺粉に水を加えてこねていくのですが、水の量にマニュアルはなく、職人がその日の温度や湿度に合わせ調整していきます。
─ こんなにも近代的な内装で、多店舗展開もされているお店なのに、手作業で作られてるって、すごく意外です。
張本 よく言われます(笑)
通常5-10分程度でお出ししていますが、オーダーが混みあうと20分程度お待たせしてしまうこともあります。
しかし、打ちたて・茹でたてを最高の状態でお召し上がりいただきたいので、手仕事にこだわっています。
─ 先ほど、こねあがった生地が韓国製の圧縮機にセットされ、麺状になって一気に茹で釜に落とされるところを拝見しました。
一気に投入することで1本1本茹で時間がばらつくことがなく、秒単位で調整されているんですね。
張本 そうですね。実は、茹で時間にもマニュアルはありません。
職人が、麺の色や風合いを確認して、ベストなタイミングでザルに上げ、一気に氷水でしめていきます。
生麺だからこそ、スープの中に入れた瞬間からどんどん麺がスープを吸ってしまうので、是非最高の状態でお早めにお召し上がりいただきたいです。
─ (試食して)これまで食べた冷麺の食感とはまるで別物です。
過去に「噛み切れなくてゴムみたい・・・」と感じる冷麺もありましたが、こちらは、しっかりとした弾力はあるものの、歯切れがよいですね!
細いので、適度な食感が楽しめつつスルスルと心地よく喉を通過していきます!
そして、スープがまたスゴイです。
圧倒的な「THE牛!」のコクと野菜の奥深さの波が押し寄せる、厚みがありつつ上品な味わいで、いつもはお酢で味変するのですが、そんなことも忘れてしまうほどの存在感あるおいしさですね。
そして、先ほど教えていただいた白キムチの持つほのかなニンニクの風味としっかりとした酸味が最高のアクセントになっています。
唐辛子の使われていない白キムチを合わせることで、繊細な麺の風味・スープのおいしさが存分に楽しめるんですね。
張本 赤くて辛いキムチから、唐辛子を使わない白キムチや、ほのかな酸味のあるスープのような水キムチもありますね。
材料や季節、地域などにより、200種を超えるキムチがあると言われているので、色々なキムチと出会っていただけたらと思います。
─ 昨年は、東京・虎ノ門にもお店をオープンされたそうですが、今後はどのような展開を予定されているのでしょうか?
張本 今年は東京エリアでの展開を拡大していきます。
さらに来年は、東南アジアでの出店を予定しています。東南アジアの食文化にはもともとスパイシーなお料理が根付いています。
なので、私たちのチゲ鍋やチヂミといった韓国料理を紹介したいですし、韓国生まれ・京都育ちの「京都冷麺」をご紹介したいと思っています。
私たちが作り上げた、オンリーワン冷麺のおいしさを世界中の1人でも多くの方にお伝えしていきたいですね。
キムチで彩る発酵ライフ
これまで何気なくキムチを口にしてきましたが、今回の取材を通じ2つの驚きがありました。
1つ目は、アジョシで提供されている白キムチと、私が今まで食べてきた白菜キムチとの味わいの違いです。
アジョシでいただいたものは酸味が活き活きしていてパワーを感じる美味しさでした。
張本社長がおっしゃっていた「大切なのはキムチ選び」という言葉の意味がよくわかりました。
2つ目は、お料理によっての使い分けでした。
日本のお味噌に赤味噌や白味噌があるように、また手打ちそばに十割や二八があるように、韓国の方の食生活においてはキムチの重要度が高いからこそ、発酵度合いにより使い分けがされるのはごく自然なことなのかもしれません。
キムチは韓国の食文化そのものであることがよくわかりました。
キムチは美味しい上に、乳酸菌たっぷりで健康サポートが期待できて嬉しいこと尽くめ★
乳酸菌がしっかり含まれたお好みのキムチに出会い、発酵ライフの幅をさらに広げてみてください!
【アジョシ 三条タカセ店】
住所:京都市中京区中島町105 タカセビル4F
電話:075-366-4670
営業時間:17:00~24:00(L.O. 23:30)
定休日:年中無休
公式サイト:https://ajoshi-kyoto.jp/