発酵を手軽に楽しむためのWEBマガジン

カレーやおつまみに♩さっぱり美味しいインドの漬物「アチャール」

炊き立てのご飯と味噌汁、そして漬物があれば立派な一食になるほど、漬物は日本人にとってなじみ深い食べ物のひとつです。
特に京都には、老舗の漬物屋さんがたくさんあり、京都土産にされる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そもそも漬物ってどんな食べ物?

漬物とは、その名の通り、食材を食塩、酢、ぬかや酒粕などとともに漬け込んだもの。
野菜やきのこ、山菜などを漬け込んだものを漬物と呼ぶことが多いですが、肉や魚、果物や海藻などを漬け込んだものもあります。

漬物は遅くとも奈良時代には日本で食べられていました。平安時代中期に編集された「延喜式」には、漬物に使う野菜や、塩漬けや醤油漬け、ぬか漬けなどの7種類の漬け方などが記載されているのだとか。宮中の宴や儀式などに用いられ、朝廷文化に欠かせない存在でした。

その漬物〈発酵している?〉〈発酵していない?〉

実は漬物には「発酵しているもの」と「発酵していないもの」の2種類が存在します。

「発酵しているもの」は、食材に付着した乳酸菌と食材に含まれる糖類の発酵を促し作る漬物のこと。すぐき漬けやしば漬けなど、食材と塩だけで乳酸発酵させて作る漬物もあれば、ぬか漬けなど乳酸菌や酵母、酪酸菌など様々な微生物によって生み出される漬物もあります。
どの漬物も、発酵する過程で保存性が高まり、酸味や旨味などの風味が増します。

一方、「発酵していないもの」は、酢や味噌、麹や酒粕など、発酵食品や調味漬け床に発酵食品が使われているものの、食材そのものが発酵しているわけではありません。(中には発酵食品を使わないものもあります)
らっきょう漬けなどの甘酢漬けや、べったら漬けなどの麹漬け、松前漬けなどの醤油漬け、浅漬けや梅干しなどが該当します。
漬け床の風味が添加されることによって、いろいろな味わいが楽しめます。おうちでも手軽に作れたり、スーパーやコンビニなどでもたくさん出回っているのがこちらの漬物です。

日本だけでなく世界にもいろんな漬物が

実は日本以外にも世界にはいろいろな漬物があります。

以前Haccomachiでご紹介したドイツのザワークラウト韓国のキムチの他、欧米のピクルスや、タイのパッカドーン、中国の酸菜(さんさい)と様々な国にいろんな漬物が存在します。
日本と同じく保存性を高めることが目的の漬物も多く、その場所の気候や風土・食生活に合わせて、多種多様な漬物文化が育まれてきました。

そんな世界の漬物の中から、今回は酢とスパイスで作るインドの漬物「アチャール」をご紹介します!

ピクルスのインド版?!カレーと相性抜群の「アチャール」とは

アチャールの語源は漬物・ピクルスを意味するポルトガル語の「achar(アチャール)」だと言われています。つまり、インド版のピクルスと言ったらわかりやすいでしょうか。起源はインドだといわれていますが、詳しいことはわかっていないそうです。

アチャールは、野菜や果物を酢やレモン汁、塩、スパイスそして油などに漬け込んで作ります。 日本ではカレーにらっきょう漬けや福神漬けを合わせますが、インドやパキスタン、南アジアでは、このアチャールが“カレーのおとも”として欠かせません。

アチャールのスパイシーさと酸味がカレーをより魅力的に引き立ててくれます!
味をリセットするだけでなく、一緒に食べるとカレーの味わいがより奥深いものになりますよ。

もともとは保存食や非常食として作られていたアチャール。
作り方や食材によっては2年以上保存可能なものもあるのだとか!

地域によって調理法やスパイスに違いがあり、さまざまなバリエーションがあるのも特徴。 漬け込む食材の種類も豊富。玉ねぎ、にんじん、きゅうり、セロリなど、日本の漬物でもよく見る顔ぶれの野菜だけではなく、マンゴーやパイナップルといった果物や豆、さらには魚や肉を漬け込むこともあるそうです。

一口メモ
日本にもアチャールと発音が似ている「あちゃら漬け」という漬物があります。主に関西や九州で食べられる唐辛子の入った甘酢漬けなのですが、実は、このあちゃら漬けという名称もポルトガル語のアチャールが由来とされています。

実は簡単!お酒にも合う「アチャール」を作ってみよう

身近な野菜と日本でも手に入るスパイスで手軽に作れるアチャール。
カレーの付け合わせのイメージが強いですが、ほどよい辛さと酸味で、お酒のおともにもぴったり♩
パンにのせて食べても美味しいですよ。

玉ねぎのアチャール

材料

玉ねぎ 1個
(A)塩 小さじ1/2
(A)酢 大さじ1
(A)レモン汁 大さじ1
(A)カイエンペッパー(チリペッパー) 小さじ1
(A)砂糖 小さじ1
油 大さじ2
マスタードシード 小さじ1/2

作り方

①玉ねぎを薄くスライスし、塩(小さじ1/4~1/2・分量外)で塩もみし、15分ほど置く。
②しっかりとしぼって水気をとり、(A)を加えてよく混ぜる。
③フライパンに油、マスタードシードを入れて蓋をして中火で熱し、パチパチはじける音がしなくなったら②にかける。
④1時間ほど置いたら完成!

カレー屋さんでもよく出てくる玉ねぎをつかったアチャール。
辛いのがお好きな方は、②の工程のときにチリパウダーも一緒に加えるとよりスパイシーになります。
マスタードシードの香りが豊かで、しっかりとした辛味と酸味が感じられます。辛い物が好きな方に特におすすめ!

なすのアチャール

材料

なす 2本
(A)カイエンペッパー 小さじ1/2
(A)コリアンダーパウダー 小さじ1/2
(A)ターメリックパウダー 小さじ1/2
(A)塩 小さじ1
油 大さじ4
酢 大さじ2

作り方

①なすを1~2cm角にカットし、(A)と和えて15分ほど置く。
②フライパンで油を温めたら①を入れ強火で炒める。
③なすに油がなじんだら蓋をして弱火で1~2分ほど火を通す。
④火を止める前に酢を加え、なじませたら完成。

香りづけに③の工程でおろししょうがやおろしニンニクを少し加えるのもおすすめです。 カレーやご飯がより進む味わいになりますよ!
油でとろとろになった茄子にスパイスの奥深い味わいと酢の酸味が加わり、お酒のあてにもぴったりです♩

大根・きゅうり・人参のアチャール

材料

大根 100g(3cmくらい)
きゅうり 100g(1本分)
人参 50g(1/4本分)
(A)酢(レモン汁) 小さじ1/2
(A)塩 小さじ1/4
(A)カイエンペッパー 小さじ1/4
(A)ターメリックパウダー 小さじ1/4
油 大さじ2
フェヌグリークシード ひとつまみ
すりごま 大さじ2

カラメルやメープルシロップのような甘い香りとほろ苦さが特徴のスパイスです。
フェヌグリークはマメ科の植物で、地中海地方原産。アフリカや中近東、インドで栽培されており、カレー作りに欠かせません。
たんぱく質、ミネラル、ビタミンがたっぷり含まれ、油で炒めて使う料理法により苦味が弱くなり、野菜料理の良いアクセントになります。

作り方

①野菜を短冊切りにし、塩(小さじ1/4~1/2・分量外)で塩もみし、30分ほど置く。
②野菜の水気をとったら(A)を加えてよく混ぜる。
③油を弱火で熱して、フェヌグリークシードを加える。香りがたって黒く色づいたら火を止め、②に入れる。
④すりごまを加え、よく混ぜ合わせたら完成。

すりごまの風味が加わったアチャール。フェヌグリークシードは熱するとメープルシロップのような甘い香りが立ちます。 黒く色づくまで熱しますが、焦げないように注意してくださいね。
すりごまとフェヌグリークシードの甘い香りでまろやかさを感じる味わいです。

どのアチャールも作った後は冷蔵庫で保管し、2~3日で食べきってください。

アチャールの他にもカレーに合わせたい副菜

ライタ
クミンなどのスパイスで香りづけしたヨーグルトと細かく切った野菜を和えたサラダです。こちらもアチャール同様、ほどよい酸味がカレーによく合います。

サブジ
野菜にスパイスをまぶし、蒸し焼きにしたもの。 芋やカリフラワーなどで作ったサブジはほくほく、ほろほろとした食感で美味しいですよ。

カチュンバ
レモンと塩で味付けしたシンプルなサラダ。トマトやきゅうり、玉ねぎ、ひよこ豆、ししとうなどでよく作られます。 クミンやパクチーなどのスパイスを合わせることも。

サンボル
こちらはスリランカスタイルのカレーによく合わせられる副菜です。
人参や紫玉ねぎを細かく切って、ココナッツファインというココナッツの粉とレモン(ライム)、塩で味付けします。 炒ってふりかけのようにすることもあるそうですよ。

スパイスや塩、あとはレモンやヨーグルトなどの酸味があるものを合わせるものも。 アチャールと同じく、スーパーに置いてあるスパイスを使って、意外と手軽に作れるものが多いんですよ!

また、インドカレーのおともといえば、ラッシーを思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ラッシーにはヨーグルトが使われており、はちみつなどで甘味を出しているものが多いです。 ほどよい酸味と甘みがカレーによく合いますよね♩

また、実はヨーグルトの乳脂肪には、唐辛子の辛味成分「カプサイシン」を溶かす働きが。 お口の中をリセットすることで、さらにカレーが美味しく感じられるはず!


インドのお漬物「アチャール」は、日本のお漬物と同じく、普段の食卓を彩る副菜のひとつだということが分かりました。 バラエティに富んだ種類や味わいで、地域や家庭によってその味わいはさまざま。

スパイスの風味や香りで、野菜が奥深い味わいに仕上がり、お肉やお魚を使わなくても満足感があるので、ビーガンの方にもおすすめです。

ほかにも自分流にアレンジして野菜だけでなく肉や豆、果物で作るのもよさそうですよね!

最近では、美味しいスパイスカレーのレトルト食品が売られていますし、近年のブームにより、おうちで本格的なスパイスカレーを作る方もいらっしゃるのでは。 アチャールはカレーをよりおいしくする魔法のような副菜。ぜひ付け合わせに作ってみるのはいかがでしょうか?

世界のお漬物シリーズ

“塩+キャベツだけ“で発酵?乳酸菌で免疫力アップ 「ザワークラウト」の作り方 ヨーグルトに匹敵する乳酸菌が摂れる!美腸・美肌効果も?韓国の発酵食品vol.1「キムチ」