発酵を手軽に楽しむためのWEBマガジン

スイーツやカクテルとしても◎「みりん」の魅力や、類似調味料をまとめました

料理の縁の下の力持ち!「みりん」とは?

和食を作る上で欠かせない料理の基本「さしすせそ(砂糖・塩・酢・醤油・味噌)」は有名ですが、同じくらいよく使う調味料のひとつが「みりん」ですよね。
みりんを使うと、まろやかな甘みが加わり、コク深い味わいに仕上がります。また、糖分とアルコールが含まれるみりんは、加熱することにより肉や魚などの臭みを取る、食材の煮崩れを防ぐなどの効果も期待できます。ほかにも、食材に旨味をしみ込ませたり、料理に照りやつやを加えたりなど、味わいから見た目まで料理をさらに美味しくする縁の下の力持ちのような存在です。

そんなみりんは、蒸したもち米、米麹、焼酎などのアルコールを原料とし、40~60日ほど糖化(発酵)・熟成させて作ります。
熟成の間に、麹の酵素の働きでもち米のでんぷんやたんぱく質が分解され、ブドウ糖やオリゴ糖、アミノ酸、ペプチドなどの甘味・旨味成分が生成され、特有の風味が生まれます。
ただし、この製法は「本みりん」の製法で、スーパーなどでは本みりんのほかに「みりん風調味料」や「みりんタイプ調味料」といった類似調味料が売り場に並んでいます。

みりんの甘味・旨味の秘密とは?

実は、みりんと日本酒はどちらも麹菌の働きを利用して作られ、製造工程も似ています。大きな違いとして、日本酒は麹によって生成されたブドウ糖などの糖分が、その後酵母の餌となってアルコールに変化していくのですが、みりんは麹が作った糖分を酵母菌に分解されないよう、焼酎などのアルコール原料を添加します。こうすることによって、もち米と米麹の米のでんぷん、たんぱく質から生成された数種類の糖やアミノ酸などがそのまま甘味や旨味、コクとして味わえます。これがみりんの奥深い旨味や広がりのある甘味の秘密なんですね。

本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ調味料の違いって?

先ほど「本みりん」のほかに「みりん風調味料」「みりんタイプ調味料」が存在するとお伝えしました。
それぞれ、特徴やメリットが少しずつ違うので、用途や好みによって使い分けることができます。

本みりん

もち米、米麹、焼酎を原料に、糖化(発酵)、熟成してつくられます。米麹の働きによって、コクとまろやかな甘味、そして芳醇な香りが生み出されます。本みりんにはアルコールが14%前後含まれているため、酒税対象となり、「みりん風調味料」「みりんタイプ調味料」などの類似調味料より少し価格が高くなっています。熟成期間や使う米麹、アルコール原料の違いによって味わいが異なるので、好みのブランドを探すのもおすすめです。

みりん風調味料

水あめなどの糖類、米、米麹、酸味料などをブレンドしてつくった調味料です。本みりんより糖分が多く、アルコールは1%未満とほとんど含まれません。
本みりんと同じような味わいを付加できますが、肉や魚の臭み取りや、煮崩れを防ぐ効果を期待する場合は「本みりん」や「みりんタイプ調味料」などのアルコールを含むものを使う方が適しています。逆に、アルコールが少ないので、煮切る工程を省いてマリネや和え物などの非加熱料理に使うことができます。

みりんタイプ調味料

みりんタイプ調味料は、米、米麹、水あめなどの糖類、食塩、アルコールなどを原料とした調味料です。「本みりん」や「みりん風調味料」と異なるのが、塩分が含まれているということ。アルコール分が本みりんと同じくらい含まれるため、煮崩れを防ぐ効果があります。また、塩分が加わることで酒税対象とならないため、本みりんよりも安価で購入することができます。ただし、食塩が入っているので、味付けの際に塩加減の調整が必要となる点、また、飲用などには使えない点に注意が必要です。

もともとはお酒だった?!みりんの歴史

そもそも「みりん」はいつごろから使われるようになったのでしょうか?

みりんの起源には諸説あり、有名な説としては、戦国時代に中国から「密林(みいりん)」と呼ばれる甘い酒が伝わったとする説と、日本で古くから作られていた「練酒」「白酒」の腐敗防止に焼酎が用いられ、その過程で誕生したという説があります。もとは「甘いお酒」として上流階級の間で飲まれていたものが、江戸時代中期には国内製造され、女性やお酒の苦手な人に広まっていったようです。さらに、江戸時代後期の「守貞慢稿」に、鰻のたれやそばつゆでもみりんが使われるようになったと記載があるように、次第に飲用から料理の旨味やコクを出す調味用として用途が変化していきました。

『守貞謾稿』に描かれている鰻串焼きの棒手振の様子 / 所蔵:国立国会図書館

実はこんな楽しみ方も!スイーツやドリンクに「みりんアレンジ」

そんなみりんの甘味・旨味をダイレクトに感じられるのが、そのままかけたり、煮詰めて甘味を凝縮して使うアレンジです。
煮物や照り焼きなどの日本料理の調味料で活躍するみりんですが、今回は、「本みりん」の美味しさを余すことなく楽しめるスイーツ&ドリンクアレンジをご紹介します!

みりんアイス

本みりんをバニラアイスに少し垂らすと、洋酒が効いた本格的なアイスのような大人の味わいに!
しかも、ラム酒などの洋酒と比べ、丸みのある味わいでとっても食べやすいですよ。

みりんシロップ

本みりんを鍋で弱火にかけ半分くらいの量になるまで煮詰めたら完成です。
先ほどのアイスにそのままかけるのはアルコールが強くて食べにくい…という方は、煮切った本みりんをかけることで、カラメルシロップのような奥深い風味と甘味を楽しむことができます。
アイス以外にも焼きいもやホットケーキ、ヨーグルトなどにかけるのもおすすめです!

みりんカクテル

アルコールと甘さ、その両方を備える本みりん。ソーダと掛け合わせるだけで、甘くてコクのあるみりんカクテルが完成します。
レモン果汁を追加したり、ミントを入れることで、レモンスカッシュ風のカクテルや、モヒート風のカクテルも楽しめますよ。
甘くておいしい本みりんですが、アルコール分は14%前後となかなか強いので飲みすぎないようにご注意くださいね。


みりんシロップは、清潔な保存容器に移して1週間ほど冷蔵庫で保存可能です。
ぜひ、調味料としてだけではなく、様々なアレンジでお楽しみください!
いつもは「みりん風調味料」や「みりんタイプ調味料」を使っているという方も、一度「本みりん」を使ってみてはいかがでしょうか?
「みりん」の新たな魅力に出会えるかもしれませんよ。


参考サイト: 全国味淋協会 本みりんの知識 https://www.honmirin.org/knowledge/
九重味淋株式会社 本みりんを知る https://kokonoe.co.jp/mirin01
キング醸造株式会社 日の出みりんコラム https://hinode-mirin.co.jp/column/mirin-column/

参考文献: ferement books・おのみさ「発酵はおいしい!-イラストで読む世界の発酵食品-」,株式会社パイ インターナショナル,2019年12月