発酵を手軽に楽しむためのWEBマガジン

発酵読書ノート⑤「お味噌知る。」

今回ご紹介する本は、「お味噌知る。」です。料理研究家 土井善晴さんによる味噌汁本で、お嬢さんの土井 光さんとの初めての共著によるレシピ&エッセイ本です。

土井善晴さんは、2016年に「食事は一汁一菜で良い」「一汁一菜は健康に生きるための持続可能な食事である」という考え方を提唱されました。まずご飯を炊くこと・味噌汁を作ることを大切にするこの考え方は、日々の忙しさのなか「きちんとした食事を作らなくてはいけない」とレシピと格闘していた人たちから大きな反響がありました。

土井家では、毎日の食卓で必ずお味噌汁を楽しむのだとか。この本では、すごーく気になる土井家とっておきの味噌汁と味噌料理のレシピが紹介されています!

著者 土井善晴・土井 光さんについて

ご存じの方も多いかと思いますが、土井善晴さんは料理研究家をなさっています。大学ご卒業後、スイス、フランス、大阪で料理修行され、その後お父様の学校である土井 勝料理学校勤務の後、1992年に独立され、現在「おいしいもの研究所」代表を務めておいでです。1987年より「きょうの料理」(NHK)などに出演され、著書には「一汁一菜でよいという提案」「土井善晴のわが家で和食全101巻」「土井善晴の素材のレシピ」などがあります。

土井 光さんは、土井善晴先生の長女でいらっしゃり、同じく料理研究家です。大学でフランス語を専攻され、その後フランス・リヨンのL’institut Paul Bocuseでフランス料理とレストランマネジメントを学ばれました。その後三ツ星レストランや老舗ショコラティエで料理人・パティシエとして修業。在仏歴7年のフランス通です。

味噌汁を5つのテーマに分けて分類

「お味噌知る。」は、味噌汁についてのベーシックな情報からスタート。基本の味噌汁の作り方や、水・具材・だしとなる食材、そして様々な種類の味噌について解説されています。

味噌汁には、人それぞれの立場・場面に合わせた作り方があるのだそうです。味噌汁をおかずにするなら、具材を植物油で炒めて入れる、だしの出る食材(きのこ、油揚げ、ベーコン、脂のある肉、魚)を入れる、味噌汁だけで味わいたいならだし汁(昆布、煮干し+水)に味噌を溶く、といった具合です。

それをふまえ、味噌汁が5つのテーマに分けて紹介されています。

1.自立の味噌汁

「自立の味噌汁」とは、1人でもしっかり健康を整えて生きていくための味噌汁。「料理して食べる」を実現するための味噌汁です。

そういえば、私が大学進学時1人暮らしをすることになった時、母が実家から煮干しと母が作った味噌を送ってくれていたものでした。忙しくても味噌汁を作ることを習慣にしていれば、野菜や海藻、カルシウムなど色々な食材を食べられるから、と教えてくれていたことを思い出しました。

土井先生も、味噌汁が作れるようになれば、自然と他のお料理も作れるようになるとおっしゃっています。
まさに自立を促してくれる存在ですね。
「落とし卵といろいろ野菜の味噌汁」「そうめんの入った味噌汁」など、具だくさんで様々な栄養素が摂れる味噌汁や、1椀で食事が完結させられる味噌汁などが挙げられています。

2.家族の味噌汁

料理する人は、自然と食べ手を思いながら調理をするもの。具材を選んでそろえ、見た目の良さも考えられた味噌汁です。
「揚げ卵の味噌汁」はとても新鮮でした。
なんと、フライパンで作った揚げ卵を味噌汁に入れるという新しい発想のお味噌汁なんです。
汁と具材のコントラストがはっきりしていて、1汁だけど2品のお料理をいただいているようなちょっと得したような味わいでした♪
そして、お味噌汁に?と思ったパセリの香りがなんとも心地よいアクセントになっていました。

3.組み合わせる味噌汁

続いては、一緒に出すおかずとのバランスを考えて具や味の濃淡を考える味噌汁です。義晴先生によると「ハンバーグにトマトの味噌汁はなかなかやろ」とのこと♬

主菜が和風・洋風・中華風だったとしても、使う出汁や具材、スパイス等で万国流にアレンジできてしまうのが、味噌汁の懐の深さですよね。
例えば「シウマイ弁当と、もやしの味噌汁」や「サンドイッチと、牛乳の入った味噌汁」など。牛乳の入った味噌汁を作ってみましたが、なるほど、牛乳が入ることで、味噌汁がものすごーくサンドイッチに歩み寄ってくれています。ミルキー&マイルドで、パンとの相性バッチリ!「こういうことなんだ!」と納得の瞬間でした。
(レシピではマッシュルームとブロッコリーが使われていましたが、私は冷蔵庫にあった椎茸とほうれん草を使いました)

4.季節の味噌汁

日本に暮らしてうれしいことの1つが四季のうつろいです。
季節を意識し、旬の味わいを家族で楽しむだけで心がちょっと豊かになります。
季節の食材を使って一品料理を作るとなると、それなりに量が必要だったり、きちんとしたレシピを調べたりと手間がかかったり大変だったりしますよね。
でも、「筍と若布の味噌汁」「夏野菜の味噌汁」といったレシピであれば、いつもの味噌汁の具を季節のものにチェンジするだけで、気軽に手軽に旬の恵みをいただくことができるんです。

5.味噌料理・スペシャルな味噌汁

最後は調味料としての味噌を堪能するためのレシピ。
「味噌おむすび」「焼き味噌おむすび」は、一度作ればリピート間違いなし!いつまでも記憶に残る美味しさです。
「にんにく味噌のスティック野菜」は「これまでは買ってたけど、自分でこんなにおいしく作れるんだ!」とうれしい発見でした。

イソフラボンやサポニンなどの大豆そのものに含まれる成分に加え、麹菌や乳酸菌などの微生物が免疫や消化力をサポートしてくれると言われている味噌。体に良いだけでなく、多様なうまみ成分も含まれ、あらゆる具材との取りまとめ役になり初心者でも味が決まりやすく、短時間で調理ができるのも味噌汁のうれしいポイントですよね。
私も週に何度かは味噌汁を作っていますが、たくさんのレシピを学べたので、まだ味わったことのない味噌汁を作ってみたくなりました!

味噌汁はクリエーション

そして、レシピ集の後には、心にじんわりと染み入る、あったかい味噌汁のようなエッセイが。
自分で料理して食べることの大切さがわかりやすくやさしく語られ、スーッと理解できました。

そして、「ひと椀の中のお味噌汁の世界はとても小さいですが、そこには無限の変化と可能性があります」「味噌汁の工夫だってクリエーションだと思います」というフレーズが印象的でした。この言葉は、多くの方の味噌汁に対する概念を大きく変えてくれるのではないでしょうか?

私は味噌汁って、いつもなんとなく添え物として作っていたような気がします。変化があったとしても野菜が変わる程度。なので、子供たちも時には「また味噌汁?」という顔をしていたり。

でも、これからは違います!味噌汁はもっと自由でよいと教えていただいたので♬
主菜に合わせてだしや具をコーデしたり、旬の食材を積極的に入れたり、そうめんを入れたりや雑炊仕立てにしたり。具材を豪華にしてお味噌汁が主役になる日があってもいいですね。

皆さんも、さらに豊かな味噌汁ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか♬
No Miso soup, No Life!

「お味噌知る。」

著者:土井善晴・土井 光
発行:株式会社世界文化ブックス(2021/10/30)
ISBN: 978-4-418-21317-7
定価:1,760円 (税込)