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パンと発酵の関係 初心者でも簡単な“レンジ発酵”で作るパンのレシピも紹介

パンはいつから食べられている?

皆さんはパンはお好きですか?Haccomachi編集部にはパン好きが多く、かくいう私も、小麦とバターのいい香りに誘われて、ついつい予定外に買ったり、休日にお気に入りのパン屋さんで大量買いしたりしています。
昼と夜はごはんを食べる習慣があるけれど、毎日朝ごはんだけはパンを食べているという方も多いのではないでしょうか。

そんなパンですが、いつから食べられているかご存じでしょうか?

遡ること今から8000~6000年前、古代メソポタミアでは、すでに小麦粉をこねて焼いたパンの原型となるもの(アジムと呼ばれる無発酵のピザのような形のもの)が食べられてたのだそう。
その後、小麦栽培とパン作りは古代エジプトへ伝わりました。そんな中、焼き上げる前の生地を放っていたところ酵母菌の発酵が進み、ふっくらとしたパンが焼きあがったのだとか。偶然にも発酵パンの美味しさを知った人びとは、紀元前2500年ごろには200種類ものパンを作り出していたという記録が残っています。

日本へは、鉄砲伝来で知られる1543年、ポルトガルから持ち込まれました。
もともと日本は米食だったこともあり、その当時はパン食はなかなか根付きませんでした。アヘン戦争のころに兵糧として注目され少しずつ広まったものの、庶民に広く普及したのは文明開化のころだとされています。1875年には、日本独自の組み合わせである「あんパン」が売り出され、大ヒットとなりました。

パン作りにおける発酵とは

パン作りにおいて、発酵とは、イーストと呼ばれるパン酵母が、小麦粉や砂糖に含まれる糖分を分解し炭酸ガスとアルコールを発生させる現象を指します。
このときに発生する炭酸ガスが、小麦粉を水とこねることで形成されるグルテン組織の中にたまってパン生地を膨らませます。また、発酵中には、生地の熟成も進み、風味や香り、弾力が生まれ、パンの美味しさが引き出されます。

次に、どの段階でどういう風に生地を発酵させるのかを見ていくため、パン作りの大まかな流れをまとめてみました。

パン作りの流れ

計量・こね
生地の下準備です。計量し、捏ねて生地のもとを作ります。
一次発酵
イーストを活性化させ、発酵させる。
ガス抜き・ベンチタイム
発酵した生地中のガスを抜き、休ませて伸びやすくします
成形
生地を落ち着かせたら、作りたいパンのサイズや形に切り分け、成形していきます。
二次発酵
オーブンに入れる前に最大まで膨らむよう、もう一度発酵させます。
焼成
オーブンで焼き上げます。
※工程は一例です。

パン作りでは、2回に分けて発酵工程を入れることが多いです。(パンの種類や作り方によってその限りではありません)
一次発酵、二次発酵にはそれぞれ違った目的があります。

一次発酵

一次発酵の目的は「パン生地を膨らませ、ふんわりとした食感を生み出すこと」と「小麦の風味や旨味を引き出すこと」の2点です。 そのため、一般的には一次発酵ではゆっくりと時間をかけて熟成させます。
温度:25~35℃、湿度:70~75%の環境で生地が2~2.5倍に膨らむまで待ちます。見た目以外に、フィンガーテストで発酵の状態を確認できます。フィンガーテストとは、生地の中央に強力粉を付けた指を差し込み、抜いた後の穴の状態で発酵しているかどうかを確認するというもの。穴がそのままか少し小さくなる状態であれば一次発酵は完了です。(生地が押し戻される場合は発酵不足、逆に指を入れることで全体がしぼんだり、気泡がでてきたりする場合は過発酵の状態になります)

二次発酵

一次発酵に対し、二次発酵は、「生地を焼くときに膨らむピークをもってくること」が主な目的。
生地が最大に膨らむ直前まで発酵させ、生地が膨らむ余地を残しておくことで、焼き上げる際に生地がのびのびと膨らみ、ふんわり仕上げることができます。
温度:30~40℃の環境で生地が約2倍に膨らむまで待ちます。一次発酵ではじっくりと発酵させましたが、二次発酵ではイーストが最も活発になるよう一次発酵より高い温度で仕上げます。生地の表面を指でそっと押して離したあと、指の跡が少し残れば発酵完了です。 二次発酵は、最終発酵やホイロと呼ばれることもあります。

発酵工程なしでパンは作れる?

イーストの代わりにベーキングパウダーを使って膨らませる方法で作ることもできます。
膨らむ力はイーストで発酵させた場合より強くないので、マフィンやスコーン、パンケーキなどパンというよりは焼き菓子のようなさっくりと軽い食感のものを作る際におすすめです。

天然酵母ってどんなもの?

単一の酵母菌だけを純粋培養し人工的に使いやすくしたイーストに対し、天然酵母は、乳酸菌など、酵母のほかに複数の菌が混ざり合ったパン種(だね)です。有名なものに、ホップス種、パネトーネ種、ルヴァン種などがあります。
天然酵母で作るパンは単一酵母であるイーストより膨らみにくい傾向にありますが、複数の酵母や乳酸菌が含まれるので、複雑で奥深い味わいになります。
パン屋さんによっては、天然酵母を売りにしているところもありますよね。自宅で自家製の天然酵母をつくるのはかなりの難易度ですが、実は天然酵母は市販もされているので、パンを作る際には、作りたいパンによってイーストか天然酵母かを使い分けるのもいいかもしれませんね。

実際に作ってみよう

今回は初めての方にも取り掛かりやすい、発酵工程をなるべく簡素化した作り方をご紹介します。
一般的にオーブンの発酵機能を使うところを、電子レンジの加熱機能を使って作ることで、時短にもなりますよ。

初心者でも作りやすい「電子レンジ発酵」のシンプルパン

材料(8個分)

強力粉 250g
牛乳 160cc
砂糖 大さじ2
ドライイースト 7g
塩 3g
無塩バター 20g
打ち粉(強力粉) 適量

作り方

①耐熱容器に牛乳、バターを入れ電子レンジ(600W)で60秒温める。

②ドライイーストと砂糖を加え混ぜ合わせ、バターが完全に溶けたら強力粉100gを加えダマがなくなりペースト状になるまでよく混ぜる。

③塩を入れて混ぜ、残りの強力粉150gを加えたら粉気がなくなるまでよく混ぜ、生地をひとまとまりにする。

④ラップをかけ、電子レンジ(600W)で30秒加熱する。【一次発酵】

⑤打ち粉をした台に生地を取り出しガス抜きのため軽くつぶしたら8等分に。それぞれ丸く成形し、オーブンシートを敷いた平らな耐熱皿に並べる。

⑥電子レンジ(200W)で40秒加熱し、発酵を促したら、オーブンシートごと天板に移す。

⑦絞った濡れ布巾(もしくはラップ)をかけ、オーブンの上など暖かい場所に15分ほど置いて生地のサイズが2倍になるまで発酵させる。【二次発酵】
また、200℃設定でオーブンを予熱しておく。

⑧オーブンで10分ほど焼き色がつくまで焼いたら完成。(焼きがあまければ追加で加熱してください)

シンプルなプレーンパンの完成です。バターやジャムを塗ってお召し上がりください。
⑤の成形工程の際に、チョコチップを混ぜ込んだり、中にチーズを入れたりすることで、お好みのアレンジに仕上げることができます。 パン作りはハードルが高いという方に、まずは試してみてほしいレシピです!

豊かな食文化を生み出す「発酵」

現在、世の中には5000以上の種類のパンが存在し、その土地によってさまざまな形で食べられています。 日本でも、あんパンやカレーパンをはじめ、2019年ごろにブームとなった高級食パンなど、独自の進化をとげたパンもたくさんあります。また、給食でもパンの日があるなど、私たちの生活に欠かせない食文化のひとつです。 使われる酵母の種類や、熟成時間、焼き時間などによってさまざまな味わいを生み出すパンは、この先も私たちの食生活を豊かに彩ってくれることでしょう。

京都はパンの消費量1位の都道府県だけあって、たくさんのパン屋さんがあります。
いろいろなパン屋さんを巡ったり、自宅で手作りしたり、お気に入りのパンをみつけて、いつもの食事をさらに楽しいものにしていきたいですね。

参考サイト:
■山崎製パン株式会社 パンの歴史観
https://www.yamazakipan.co.jp/stylebook/pan-history/index.html