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京都一の傳 本店 料理長の和食講座〈vol.2〉 – 季節のお味噌汁【夏】

普段日常ではなかなか知ることのできない和食のいろはをお届けする「和食講座」。 京の伝統料理・西京漬を作り続けてもうすぐ100年の老舗「京都一の傳」本店の料理長 佐藤暢郎が、いつもよりちょっと本格的な和食をおうちでも取り入れられるようなレシピや、日本料理ならではのちょっとしたコツ、四季折々の食材の話をお伝えしていきます。

今回の話題は、「味噌汁」です。

この季節のおすすめ具材を聞いたところ、入れる具材ももちろんですが、“あるもの”の種類や分量を変えることで美味しく味わえるそう。

料理人ならではの味噌汁の作り方を教えてもらいました。

8月ももう終わりますが、まだまだ暑い時期が続きます。夏におすすめのお味噌汁の具材は何かありますか?

料理長 佐藤

具材で季節感を出すのはもちろんできるんですが、季節によって味噌の種類や配合を変えるというのはどうですかね? 夏は赤味噌100%のお味噌汁がおすすめです。赤味噌で作る味噌汁の味は鋭角的で、さっぱりといただけるんですよ。 暑くて食欲の落ちやすいこの季節にぴったりです。
季節によって味噌の種類を変えるという発想はなかったです!

料理長 佐藤

冬は白味噌を、春・秋は白味噌と赤味噌を合わせて使うと、その時々の気候にちょうどいい味わいに仕上がりますよ。 同じ味噌汁でも、温度や湿度に合わせて、味噌が持つ特性や塩分濃度を調節することで、さらに美味しく味わうことができると思います。 季節に合った味噌と旬の食材を合わせるのというのは、四季を大切にする和食ならでは味わい方ではないでしょうか。
温度や湿度で変化する人の味覚に合わせて味噌の味わいを調合していくイメージですね!本当の意味での“季節のごちそう”という感じがします。

料理長 佐藤

味噌汁は基本的にどんな食材とも合いますね。この時期だと、素麺南京、冬瓜、加賀太きゅうり、ズッキーニなどの水分含有量の多い野菜はすっきりと食べられるので、特におすすめです。
塩味が強くすっきりとした赤味噌の味わいとも合いそうですね。

料理長 佐藤

その中でも今回は「素麺南京」を使った赤味噌の味噌汁を作りましょうか。
はい、ご教授のほどよろしくお願いします!

夏のお味噌汁「素麺南京の赤味噌椀」

料理長 佐藤

味噌汁には二番出汁を使います。
一番出汁ではないんですね。

料理長 佐藤

味噌の風味や麹の香りを楽しむため、一番出汁ほど出汁の香りが立ちすぎない方が美味しいんですよ。二番出汁を使って、最後に追いがつおでまとめると、麹の香りを活かしつつ味わいに奥行きが出るのでおすすめです。
一口メモ
一番出汁は雑味が出ないよう昆布とかつお節の旨味を凝縮した出汁で、澄んだ色合いと香り高さが特徴。お吸い物などシンプルに出汁の味を楽しむ料理に向いています。二番出汁は一番出汁を取ったあとの出汁ガラでしっかり煮出して作るため、旨味が強く濃い味付けに合います。

〈一番出汁がおすすめの料理〉
お吸い物、茶わん蒸し、うどん、そばのつゆなど
〈二番出汁がおすすめの料理〉
味噌汁、肉じゃがなどの煮物、鍋物など

材料(8人分)

二番出汁 800cc
赤味噌 80g
かつお節 8g
素麺南京 1/12個
黒ゴマ 適量

一口メモ
〈二番出汁の取り方〉

材料
一番出汁で使った昆布とかつお節の出汁ガラ
水 800cc
かつお節 10g

(1)一番出汁で使った昆布とかつお節の出汁ガラと水800ccを火にかけ、沸騰したら弱火で5分ほど煮出します。
(2)かつお節を10gほど追加したらそのまま弱火で2分ほど煮出します。
(3)火を止めてクッキングシートなどで静かに濾したら出来上がり。

①味噌汁を作る。

二番出汁を85度くらいになるまで熱し、赤味噌を溶かし加える。
赤味噌を加えた後、さらに分量のかつお節を追加(追いがつお)する。
かつお節はざるに入れて浸せば、後片付けも簡単。

②素麺南京の下準備。

素麺南京はへたを取って半分に割り、3cmくらいの輪切りにし種を取る。
湯を沸かし、10分ほど茹で、水にとってほぐすと素麺のように細い麺状になる。

③準備した味噌汁を注ぐ。

水をきった素麺南京一人分をお椀に盛る。
素麺南京の上に黒ゴマを適量ふり、①で準備した味噌汁をゆっくりと注いだら完成。

料理長 佐藤

素麺南京は味噌汁以外にも、酢の物や和え物など、さまざまな料理に使えます。下処理した状態で、いろいろアレンジしてみてください。

夏に元気をくれるすっきりと美味しいお味噌汁

赤味噌で作る味噌汁はすっきりとしていて、確かに暑い季節でもするっと食べられる味わいでした。 塩分も強いので、料理長のおすすめ通り、今回の素麺南京のように水分が多めの野菜がよく合います。

具材がごろごろ入ったお味噌汁ではないですが、旨味や風味がしっかりしていて満足感が高く、黒ゴマの香ばしさがすごくいいアクセントになっていました。
味噌汁にゴマを入れると香ばしさや風味がでて一味違った味わいに。今後とり入れたいひと工夫です。

他に挙げられていた水分の多い野菜の冬瓜、加賀太きゅうり、ズッキーニ以外にも、茄子やみょうがなどもさっぱりといただけてよさそう。
夏バテしやすい時期なので、豚肉、豆腐、しじみなどタンパク質が摂れる食材を使うのもおすすめです。

前回に続き、季節を目一杯楽しむお料理とひと工夫を知ることが出来ました。
次回以降も引き続き、四季を大切にした和食の楽しみ方を料理長に教わっていきますのでどうぞお楽しみに!

前回の料理長の和食講座はこちら

京都一の傳 本店 料理長の和食講座〈vol.1〉 – 7月のレシピ紹介:「鱧」×発酵食品「酢」

「京都一の傳 本店」では、毎月、旬の食材がたっぷり使われた季節の前菜をはじめ、椀物、炊き合わせ、そしてメインには京都一の傳秘伝の西京漬を丹念に焼き上げた「蔵みそ焼」をお楽しみいただける月替わりのコース料理をご用意してお待ちしております。

京都一の傳 本店

所在地
〒604-8121
京都市中京区柳馬場通り錦上る十文字町435番地

営業時間
1階 お買い物 10:00~18:00/2階 お食事 11:00~16:00(L.O.14:30)

電話番号(お食事専用ダイヤル)
075-254-4070(受付時間10:00~18:00)
※お食事は事前のご予約をおすすめしております。
※新型コロナウィルスの影響で飲食営業を臨時休業、時短営業している場合がございます。詳しくは公式ホームページをご覧ください。

公式ホームページhttps://www.ichinoden.jp/
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京都一の傳 本店 料理長

佐藤 暢郎

大阪の有名和食店やホテルで研鑽を積んだ後、自身の和食店「素料理さとう」をオープン。ビブグルマンを獲得し、その後2017年5月に京都一の傳 本店料理長に就任。素材の味わいを活かしつつ、お客様に新たな発見をお楽しみいただけるような料理を信条としている。