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実は「生ハム」も発酵食品?!「熟成肉」は発酵している?お肉と発酵の関係を解説

日本では馴染みがない?実は肉にも発酵食品が

皆さんは発酵食品と聞くとどんな食材を思いつきますか?
ヨーグルト、チーズ、納豆、味噌、醤油、甘酒、ビール、かつお節、魚醤や漬物など、私たちの身の回りには数多くの発酵食品が存在していて、それぞれ牛乳、大豆、米、麦、野菜や魚介類といったものが原料となっています。

上記にあげた原料の食材以外に、世の中には“肉”で作る発酵食品もあります。
日本人にはあまり馴染みがないものが多いですが、古くから畜産業が盛んだったヨーロッパなどでは、イタリアやスペイン料理の前菜の定番の生ハムをはじめ、ドライソーセージやサラミなど、肉を発酵させて作る肉の加工品が食べられてきました。

肉を発酵させるメリットとは

コロナ禍では、腸内環境を整えることで免疫力を高められると、納豆やヨーグルトなどの発酵食品が注目を浴びました。
健康の観点から語られることが多いですが、発酵には、食材の旨みを引き出し味わいや香りをアップさせたり、腐敗菌の増殖を抑えたりと、食品の“美味しさを引き出し”、“保存性を高める”というメリットがあります。
肉を発酵させるのもまさしくこの2つのメリットによるところが大きく、旨味を引き出し味わいを深め、長期保存を可能にするために発酵調理を施します。

発酵している「生ハム」 発酵していない「生ハム」

発酵工程を経て作られているのが、イタリアの「プロシュート」やスペインで作られる「ハモン・セラーノ」。
加熱せず生のままで、長期間(1年から長いものだと2年ほど)かけて乾燥、発酵熟成させるのが特徴です。
熟成の過程で、白カビなどの菌が乳酸発酵します。表面にカビが付着することで表面からの腐食を防ぎ、発酵する際にたんぱく質がアミノ酸へと分解され、旨味が増し風味がよくなります。

それに対して日本で作られている生ハムは、ドイツの「ラックスハム」と呼ばれる発酵工程を経ていないものがほとんど。
塩漬けし、2日ほど乾燥、燻製させる製法で、発酵工程がなく乾燥期間が短いため、水分量が多く塩気としっとりした食感が特徴です。

実は、日本ではプロシュートやハモン・セラーノもラックスハムも「生ハム」と呼ばれているので、発酵している生ハムと、発酵していない生ハムが存在している、ということになるのです。

サラミや金華ハムも!肉の発酵食品図鑑

サラミ(ドライソーセージ)

豚のひき肉に食塩などの調味料、ラード、ラム酒などをまぜ腸詰めして乾燥、熟成して作られるイタリア発祥のドライソーセージの一種。
今では、牛肉や、牛と豚の合いびき肉でも作られたり、パプリカや唐辛子、にんにくなどを入れて風味を出したり、地域によってさまざまなアレンジが加えられています。ピザの具材としてもなじみ深いですね!

金華火腿(ヂンホアフォトェイ/金華ハム)

プロシュートやハモン・セラーノとともに世界三大生ハムのひとつと言われているのが、中国で生まれ900年もの歴史をもつ金華火腿です。
金華豚と呼ばれる特別な豚のみで作られ、表面にラードを塗り長期間熟成します。薄くスライスして食べることもありますが、料理の旨みを引き出す食材として使われることが主流で、上湯と呼ばれる高級中華には欠かせないスープだしとしても使われます。

サイクローク・イサーン

タイのイサーンという東北部の地域で食べられる球体のような形をした発酵ソーセージで、豚ひき肉と香辛料、もち米(カオニャオ)などを混ぜ合わせ形成して作ります。日本ではほとんど知られていませんが、タイではポピュラーな食べ物で、屋台などでもよく見かけます。
発酵による独特な酸味と強い旨味で、お酒のおつまみにぴったりのクセになる味わいです!

熟成肉って発酵しているの?

「熟成」と「発酵」の違いを一言で表すと、「微生物が介在するかどうか」です。 微生物(酵母や乳酸菌、麹菌など)の働きで新たな成分を生み出すのが「発酵」、そして、材料自体の酵素で分解を行うのが「熟成」と言われています。

熟成肉と発酵肉は、寝かせることによって「肉のたんぱく質が分解され、アミノ酸になって旨味が増す」という点では同じですが、材料がもつ酵素か外部の酵素か、その酵素の由来が異なります。
熟成肉にもいろいろな熟成方法がありますが、一般的には肉の中の酵素でその旨味を引き出す製法だと言われています。

発酵食品を知ることで、各地の文化を体感

675年の肉食禁止令にも代表されるように、日本では明治時代まで肉食文化が根付いておらず、また、高温多湿の気候では肉を乾燥熟成させるのが難しいことから、肉の発酵食品が普及する土壌が整っていませんでした。

ですが、独自に発達してきた発酵食品もたくさんあります。
たとえば国菌のニホンコウジカビ(麹菌)とお米や大豆でつくる、お酒や味噌、醤油などは代表的な日本の発酵食品です。ほかにも、魚の旨みを利用した日本固有の世界一かたい食品とも言われるかつお節、そしてねばねばと独特なにおいを持つ納豆など、日本ならではの発酵食品はたくさんあります。

肉の発酵食品が発達した地域は、畜産が盛んであったり、気候が食肉に向いていたりと、日本とはまた違った文化や気候をもっています。
その土地土地の発酵食品をひも解くことで、その地域の暮らしや食文化を知ることができるのも、おもしろいですね。